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「友達と予定があるって、七緒のことだったんだ?」
「はいそうです」
「ふうん」
「痛い痛い痛い!」
静華の頬をつまむと、大げさに痛がった。
七緒が駅の方へ引き返していった後、僕と静華はバス停前に並んで座り、バスを待っていた。
「さっきまで海斗がいたんだよ」
「え? あー、それで。煽ったんだ」
僕の制服の襟を軽く引っ張った静華。どうやら、海斗に胸倉を掴まれたときの乱れが少し残っていたようだ。
「七緒はどうだった?」
「私に対しては割と普通だった。――海斗とケンカしたんでしょ? なんか、今じゃなくても、そのうちこうなってたんじゃないかな、多分」
「ふうん。ところで、海斗に道場の鍵を渡したんだけど」
「へ? へえ、静弥もなんだかんだ世話焼きだね」
「別にそんなんじゃない」
あの2人のケンカで、部全体の雰囲気が悪くなっている。それに、僕は経験談から、七緒と向き合えと海斗に言っただけだ。
「湊と遼平は?」
「もう済んでる」
僕たちは同時に立ち上がり、学校に向かった。
*****
僕と静華の会話は、傍から聞いていると意味不明に聞こえるらしい。
湊と遼平は慣れているから何も言われないけど、他の人は気になるという。
それは静華も知っていることだけど、"通じてるんだからいいじゃん"の一言だった。
僕もそう思ったから、思ったままのことを最低限の言葉で伝えているし、それが伝わらなかったことは1度もない。
今日、静華が七緒と、僕が海斗と話すことは、何も示し合わせていたわけではなかった。
遼平が静華にぽろりとこぼしたことを、静華が僕にぽろりとこぼし、状況を把握しただけで。
でも、そんな以心伝心の双子でも、僕には1つだけ――いや、2つといった方が正確かもしれない――理解できないことがある。
「静華」
「ん?」
「滝川さんとは、結局どういう関係?」
「は?」
「だから――」
「雅貴くんは師匠だよ」
「それだけ?」
「今はそう」
静華は少しむっとした表情だった。きっと僕に滝川さんとの関係を反対されると思っているんだろう。その通りだ。
「どうかと思うけどね」
「静弥が嫌いなだけでしょ」
「うん。そう」
「はぁ」
知りません、といった風に顔を逸らした静華。
別に2人がどうなろうと構わないが……いや、構う。だけどそれより、なんというか……シンプルに、滝川さんが義兄になるのがなんか嫌だった。