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早朝。目覚まし時計のアラームではなく、着信音に起こされた。
寝起きの裸眼でぼやける視界の中、手に取ったスマホを見ると、着信元は"鳴宮湊"。
「……し」
もしもし、と言ったつもりがかすれて出なかった。
『あ……静華? ごめん、寝てたよな』
「ん。どうしたのー……みなと……」
『相変わらず朝弱いな。ーーその、話したいことがあるんだ』
湊の力強い声に、寝ていた頭も徐々に覚醒し始める。とりあえずメガネをかけて、それから日の光を浴びようとカーテンを開けた。
すると、目に入ったのは家の前の通りに立つジャージ姿の湊。
「……いまそっちいく」
『えっ』
直接話した方が早いと思い、電話を切った。
*****
「お待たせ」
「おはよう。悪い、起こしちゃって」
「別にいい。どうかした?」
「ああ、うん……」
湊は一度目を逸らしたが、すぐに真っ直ぐこちらを見据えた。
「俺、弓道部に入部することにした」
「……………………えっ」
衝撃的な宣言だった。
つい先日、弓道を拒絶するようなことまで言って部を去った湊が、何で急にそんな決断をしたんだろう。
「何だよ。……静華は俺のために今まで色々支えてくれたから、先に言っておこうと思ったんだ」
少し照れくさそうにしながらも、湊ははっきりそう言った。
「俺はやっぱり弓道が好きで、早気はまだ治ってないけど、また弓を引きたい」
中学最後の県大会以降の、ずっとどこか上の空というか、ぼんやりしていた湊はもういなかった。
「湊、朝練行こ」
*****
弓道部は発足直後ということもあり、学校の道場で朝練をしている人はまだいない。
久々に湊と一緒に登校し、途中職員室に寄って弓道場の鍵を借りた。トミー先生はすでに出勤していて、湊の入部をみんなより一足先に歓迎してくれた。
「本当にいいのか? 俺、まだちゃんとは入部してないのに……」
「トミー先生がいいって言ってる。誰も反対しないよ。ーーあ、嘘。小野木くん以外」
「ああ……」
初対面であれだけ口論になれば、ちょっと抜けてる湊でも憂鬱そうな顔になるのはわかる。
「で、何で急に入部する気になったの?」
「えっ、それ聞く……?」
「聞くまで離さないよ」
「っ、変なこと言うなよ」
「私が湊から理由を聞くまで、湊は"離れ"を我慢するの。そして早気克服。完璧」
「……何言ってるんだ?」
湊とくだらない話をして笑った。
「湊が戻ってきてくれて嬉しい」
「……待たせてごめん。それから、支えてくれてありがとう」
静弥にも謝らないとな、と言って、湊はまた笑ってくれた。