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湊が入部する日の放課後、いつもなら七緒や小野木くんと部活に向かうところをごまかして、湊のクラスへ向かった。
授業中は静弥にバレないよう弓と矢筒を職員室に置かせてもらっていたため、回収してから弓道場に向かう。
「湊、緊張してる?」
「それは、まあ……色々言っちゃったし」
「もう袴着てけば? それなら向こうも断りづらいでしょ」
「それができる奴は緊張なんかしないよ」
話している間に弓道場の前に着いた。湊は一度深呼吸して、扉を開ける。緊張はしていても、すでに覚悟は決まっているみたいだ。
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無事、というのが無理なくらいには小野木くんと揉めたが、ともかく湊は弓道部に入部した。小野木くん以外は歓迎ムードだし。
「小野木くん、今日はなんか弓手が先行気味じゃない?」
「あ? マジか」
「マジ」
一言目の返事は刺々しいが、指摘は結構素直に受け入れてくれる。以前から"俺の射型で気になるところがあれば言ってくれ"と頼まれていたので、反発されても困るけど。
「なんかあった?」
「なんかって……」
小野木くんは後ろを振り返り、睨みつけた。視線の先にいるのは言うまでもなく湊だ。
湊は早気克服のため、静弥に会の秒数を計測してもらっていた。それが気になるらしい。
「うるせえんだよ、てめえ。気が散る」
「声に出してるのは僕だけどね」
「竹早は黙ってろ」
また始まった。静弥もあえて煽ってるしタチが悪い。
「小野木くん、端っこ行こ、端っこ」
「なんで俺がこいつのためにーー」
「あっちの方が広いし」
「小野木も、静華の指導を受けるのはいいけど、静華の練習時間のことも考えてあげてほしいな」
「静弥は余計なこと言わない!」
これ以上ケンカに時間が割かれないよう、小野木くんの背中を押して移動させた。
「小野木くん、"うちはうち、よそはよそ"だよ」
「お前は俺のオカンか!」
「かっちゃんナイスツッコミ」
小野木くんを湊たちから遠ざけると、七緒もついてきた。
「静華、オレにも教えてよ。かっちゃんばっかずるいっしょ」
「別に教えてはないけど」
「いや、竹早の指摘は結構的を射てる」
「あー、弓道だけに? ふふっ」
「ちげえよ!」
小野木くんがまさかオヤジギャグを言うなんて……。
「もー、オレを挟んで夫婦漫才しないでよね」
「してないよ。そろそろ練習しないと。静弥がめっちゃこっち見てる」
「うわっ、ホントだ。じゃあ静華、オレの射型見ててね!」
「おい七緒!」
「何だよ。かっちゃんはいつも静華に見てもらってるだろ?」
「まあまあ」
珍しく七緒が小野木くんに言い返した。でも、ケンカを避けてこっちに来たのにここでケンカされたら困る。
「順番にやればいいでしょ」
「それもそっか。静華はオレを見て、オレはかっちゃんを見る。そんで、かっちゃんが静華を見ればいいっしょ?」
「うん」
「ったく。わーったよ」
小野木くんも納得したみたいで、練習を再開した。