仲、仕掛けて-1
「静華のやつ、またぼーっとしてる」
おれと静弥と静華、愁の4人でいつも通り部活に向かう途中、 静弥がそう呟いた。
確かに、最近静華はどこか遠くを見ていることが増えた気がする。
「竹早さん、何かあったのかい?」
「……へ? 何もないよ」
「そうか」
愁、掘り下げないのに何で聞いたんだ。
弓道場に着くと、静華は女子更衣室に向かおうとしたが、途中で方向を変えた。
こっちからは見えないけど、誰か知り合いを見つけたらしく、手を振っている。
「あ、先輩!」
静華はさっきまでとは違い、満面の笑みだ。そんなに仲の良い先輩なんていたのか?
まあ、部員の多さもあって男子部と女子部は割とはっきり分かれているし、おれたちの知らない先輩がいてもおかしくないか。
おれたちも更衣室に入ろうとすると、静華と先輩らしき人の話し声が聞こえてきた。
「ーー時間があるなら、今日はどう?」
「全然大丈夫です。行きます!」
静華が話していたのは女子部の先輩ではなかった。
「じゃ、またあとで。早く着替えてきなよ」
「はい」
入部したばかりだからか、おれは見たことのない男の先輩だ。
「湊、あの先輩のこと、何か知ってる?」
静弥の問いに首を振って答えると、愁が口を開いた。
「あの人は2年の二階堂先輩だよ」
「愁の知り合い?」
「いや、名前を知っている程度だ」
「静華はどこで知り合ったんだ……?
静弥は静華のことになると少し心配性だ。というか、普通に部活で知り合ったんじゃないのか?
そんな静弥の様子に、愁は不思議そうな顔をする。
「それは、竹早くんが知る必要があることなのかい?」
「……」
静弥は愁の言葉には何も返さなかった。
それからすでに2人のいなくなった廊下を一瞥し、男子更衣室に入る。部活の開始時間も迫っているから、おれたちもそれに続いた。
*****
部活の練習時間が始まったけど、射込みは上級生優先で、おれたち下級生はすぐに的前には出られない。
だからその間は経験者が初心者に教える時間になっていた。おれと愁はいつも通り、静弥と静華に教えるために集まっていたんだけど……。
「静弥、 静華は?」
「それが、今日は先輩が教えてくれるからいいって」
静弥は少し不機嫌そうな表情でそう言った。
「そうなんだ。じゃあ、3人で練習だな」
「竹早くん1人を教えるなら、湊だけで十分だろう。俺は先に巻藁をやっているよ。あとで指導を交代しよう」
「そうだね。僕1人で湊と藤原くんの2人を独占してしまうのも、気が引けるしね」
「えっ。……まあ、それもそうか。わかった」
静華がいないのも一時的なことだろうし、なんとなく一緒にやるものだと思っていたから、2人がそう言ってさっさと分かれていくのに少し驚いた。
とはいえ、確かに教えるのは1対1の方がやりやすい。今までもおれと愁が交代で静弥と静華に教えていたし。
おれは気を取り直して、練習を始めることにした。