仲、仕掛けて-2
部活が終わった後、私は二階堂先輩に誘われてファストフード店に来ていた。
「二階堂先輩、こういうとこ来るんですね」
「普通じゃない?」
「普通ですけど。なんかおしゃれなカフェとかの方が似合う気がして」
「ああいうとこは高いだろ」
「あー、ですね」
二階堂先輩はストロベリーシェイクを飲んでいる。意外と甘党だ。今日はおごってくれるというから一番安いジュースにしてしまったけど、見てると羨ましくなってくる。
Mサイズのポテトをシェアしてつまんだところで、先輩は話し始めた。
「静華ちゃんはさ、あの幼馴染たちと一緒に弓道習ってたの?」
「え? あー、いや、私と静弥は中学からですよ。でも湊と藤原くんは、西園寺先生っていうなんかすごい人に習ってたみたいですね。私たちも弟子にしてくれって湊が頼んでくれたけど、断られました」
「! どうして?」
「さあ、理由までは。元々桐先に入るのは決まってたし、弓は部活で始めればいいやと思ってあまり追求もしなかったです」
「……ふうん」
理由がわからなかったからか、先輩はがっかりしたように視線を落とした。この人わりと顔に出るタイプだな。というか、何でそんなことが知りたいんだろう。
「聞いたわりに興味なさそうな返事ですねえ」
「そんなことないよ。ーーでも、それなら何で鳴宮くんと藤原くんは西園寺……先生に、弟子入りできたんだ?」
「ええ……それはさすがにわかんないですよ。私と静弥は、小学生4人をいっぺんに見るのは難しいとか、ですかね?」
思いの外突っ込んだことを聞いてきた二階堂先輩。私の適当な予想を聞いているのかいないのか、思案顔のままシェイクをストローでかき混ぜている。
「まあ、でも、私は弟子入りしなくて良かったと思ってますけど」
私がそう言うと、先輩はこちらに視線を移した。何でと聞かれるだろうから、先に話してしまおう。
「最初から西園寺先生を師匠だって決めてやってたら、弓道=正面打起こしだって思い込んでただろうし」
「……」
「だから、桐先に入って、二階堂先輩に会えて良かったです」
「…………ふっ。何だそれ、告白かよ?」
「は!? 違いますよ!?」
急に笑い出した先輩は、そう言ってからかってきた。人がせっかく真面目に答えてるのに!
「なら、教えてあげようか。斜面」
「えっ、いいんですか?」
二階堂先輩には今はゴム弓を使って教わっているけど、コーチに指示された通りにやっているのを見てもらう形だから正面打起こしだ。
「いいよ。試合じゃ正面で引かされるけど」
「やったぁ……! ありがとうございます!」
「そんなに斜面がいいんだ?」
「はい! だって、斜めの方がかっこいいじゃないですか? 強そうだし」
「発想が男子だな」
二階堂先輩は呆れたように笑ったけど、少し嬉しそうにも見えた。斜面は少数派だから、仲間が増えて嬉しいのかも。いやまあ、先輩はみんなと仲良く引きたいって感じの人じゃない気はするけど。
「じゃあ、明日から、射込みの時間は俺と一緒にやるか」
「はい」
「つーか、幼馴染たちはいいのかよ?」
「?」
いいのかよ、とは。一体どういう意味で聞いているんだろう。勝手に違う流派に変えたらだめってこと? でも、そういう決まりがあるなら、そもそも誘ってくれないはず。
「えっと……別に大丈夫だと思います。教える相手が静弥だけになれば、2人も自分の練習時間を増やせると思うし」
「……意外だな。四六時中、一緒にいるのかと思ってた」
「静弥と藤原くんは結構湊にくっついてるけど、私はそこまでじゃないですよー」
あんまりイケメンたちとつるんでると一部の女子が怖いし。
「それに、私は二階堂先輩みたいな射がしたいから、先輩に教わりたいです!」
「……そうかよ」
先輩はふいっと視線をそらした。あれ、これってーー
「先輩、もしかして照れてますか」
「あ? 調子乗んな」
先輩はシェアしていたポテトの残りを全部奪っていった。
「あー、ポテト……」
「なんだ、食いたかったのかよ。ほら、やる」
「うわ、すっごいちっさいやつ。でも、こういうのが意外とおいしいんですよねー」
切れ端みたいなポテトを1本くれた二階堂先輩は、なんとも言えない表情だった。でも実際、長いだけでふにゃふにゃのやつより、カリカリの短いやつの方がおいしかったりするのだ。
「リスみたいだな」
「は?」
「なんでもない。それ食ったら帰んぞ」
というか、二階堂先輩からは最初のような愛想がなくなったけど、こっちが素なんだ。