海斗と入部

【海斗視点】

風舞高校に入学してすぐ、弓道部に入部した。

男子の経験者は自分を入れて4人。団体戦には出られないが、まあしょうがねえ。

女子も結局4人しか残らず、県大会予選は個人戦のみに絞ることになりそうだ。

「……すみません。私、選手じゃなくてマネージャー希望で……」

「おお、そうじゃったのか。もちろん、マネージャーも歓迎じゃよ」

「ありがとうございます」

トミー先生からの予選の話が終わった後、帰り支度をしていたらたまたま聞こえてしまった会話。

話していたのはトミー先生と、滝川藍という女子だった。あいつ、経験者って言ってなかったか?

「はぁ……」

トミー先生と別れた後、滝川は憂鬱そうな顔でため息を吐いていた。

「お前、弓引かねえのか?」

「っ、あ……小野木くん。あは、聞いてた?」

後ろから声をかけたからか一瞬驚いたみたいだが、すぐにへらっと笑ってごまかされた。

「別にいいけどよ」

「ん。マネージャーがんばるから、何でも言ってね」

「必要ねえ。自分のことは自分でーー」

「はいはーい! 滝川さん、オレさっそくお願いしていい?」

七緒が割って入ってきやがった。

「何? 如月くん」

「お願いの前に、まずは名前で呼んでよ」

「? いいけど」

「やった! じゃあねかっちゃん、オレ今日は藍と帰るから!」

「「は?」」

滝川とハモった。

まあ、七緒とはいつも示し合わせて一緒に帰っているわけじゃないし、それは別にいい。

「七緒ファンに刺されそう」

「みんな良い子だし、大丈夫っしょ。それを言ったらオレだって藍のファンに刺されちゃうよ」

「かもねー。あれは七緒ファンと違って良い子じゃないし」

「そこは否定してほしかった」

七緒は滝川の手を引いて去っていった。一体何がしたかったんだあいつは。

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