女子を応援
【藍視点】
体育館で行われていたバスケとバレーは、一時休憩時間となった。
七緒のクラスは惜しくも1回戦、妹尾のクラスは準優勝、ゆうなと乃愛のクラスは2回戦まで進んでいた。やっぱり場慣れしている上級生は強い。
「妹尾おつかれ〜、やっぱすごいわ」
「当然ですわ、妹尾ですもの」
「妹尾ー! おつかれ、かっこよかった!」
「ゆうな、乃愛、藍、応援ありがとう。コートからも見えてたよ」
その返事すらもかっこいい妹尾は、タオルで汗を拭いながらこちらにやってきた。
「みんな弓道以外のスポーツもできるんだね〜。ちょっと覗いて来たけど、男子も結構すごかったよ」
「へぇ、どの種目を見て来たの?」
「今のところは横でやってるバレーと剣道だから、七緒と遼平のとこ。外のやつはこの後行くつもり、自分のクラスもあるしね」
七緒はセッターとして絶妙なトスを上げていたし、ボールをギリギリで拾ってアタックに繋げていた。
遼平は意外にも剣道経験があったみたいで、上級生にも引けを取らない強さだった。遼平は順調に勝ち上がっていたから、この後も試合に出るはずだ。
「そういえば、藍は聞いた? 男子がスポーツ大会で賭けやってるの」
「うん、今日のMVPを決めるってやつだよね。海斗が燃えてたけど、多分静弥に負けそうだなーって気がする」
「出た、巫女パワー」
「いや、これはそういうんじゃないから……」
単に静弥の戦略に海斗はハマりそうだというだけだ。
「MVPなんて、妹尾に決まっていますわ」
「それは言えてる」
乃愛は相変わらず妹尾をリスペクトしているが、実際に彼女の出ている試合を見ていた以上、妹尾MVP説は揺るぎないと言わざるを得ない。
「あっ、そうそう、湊ってばさっき勝手に弓引いてたんだよ」
「鳴宮……本当に弓が好きだな」
「ていうか先生にバレなくてよかったよね、普通に連帯責任とかになりそうだし」
「弓を引きたい気持ちはわかりますけれど、ルールはルールですわ」
女子は揃って呆れていた。そりゃそうだ。
それから少し話していると、クラスメイトの女子が呼びに来た。
「あっ、いたいた滝川さん! 竹早くんが呼んでたよー」
「えっ、静弥が?」
「なんか作戦がどうとか言ってたけど、滝川さん見学じゃんね?」
「うん。何だろ? まあ、行ってみるよ。ありがとう」
「オッケー。こっちそろそろ始まるっぽいから、戻って来た方がいいよ」
「わかった」
静弥からの謎の呼び出しには若干不安を感じるが、どっちにしろそろそろ屋外競技の開始時間だし、戻ることにした。
「藍戻るの? 私も一緒にフットサルの方に行くよ。うちのクラスの出番もあるし」
しばらく休憩時間になる妹尾と乃愛とは一旦別れ、ゆうなと校庭に向かった。
「何気に藍が一番色んな種目見てるよね」
「あはは、そうかも。あ、クラス戻る前に海斗のとこ寄って行こうかな」
「いいの? 次の試合確か5組と7組だったけど」
5組と7組、つまり湊と静弥、私のクラスとゆうなと海斗がいるクラス同士の試合だ。
「静弥に気づかれなければ大丈夫!」
「あーあ、絶対気づかれるフラグ立てちゃった」