新入部員-1

「舞田先輩、これ、受け取ってくれますよね?」

辻峰高校に進学して2年目の春。

朝一で教室に現れたのは、辻峰の制服を着た二階堂だった。

「……なんで」

「弓道部、入りたいんで」

ニコニコ顔の二階堂は入部届を私に差し出した。

「先輩、その顔最高ですね」

今度はニヤニヤしだした二階堂。でも、言っておかなければいけないことがある。

「二階堂。部長、私じゃないから。こっち」

いきなり現れた新入生を横でまじまじと見ていた同級生の弓道部員――荒垣と樋口。部長である荒垣を指差した。

「ああ、知ってますよ」

「……君、相変わらずめんどくさいね。よかったね2人とも、新入部員だよ」

「お前、本気?」

「本気です」

その答えを聞いた樋口は驚きながらも挨拶をして、荒垣もどうもと言いながら入部届を受け取った。

「舞田の知り合い?」

「うん。中学の後輩」

「じゃあ上手いんだ」

「上手いよ」

「先輩、今日部活やりますよね? あとでもう1人連れてくるんで」

「わかった」

二階堂は私たちをまっすぐ見て、

「俺と、全国で勝ちませんか」

そう言った。

弓道場すらないこの辻峰で、全国なんて馬鹿げた話のはずなのに、その言葉は妙に現実味を帯びていた。

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