新入部員-2

「あの1年……えっと、二階堂か。全国行くって言ってたけど、あいつはそんなに上手いのか?」

二階堂が去ったあとの教室。荒垣と樋口は二階堂について興味津々な様子だ。

「上手いよ。てか、中学じゃ個人戦優勝とか普通にしてる子。団体戦もだけど」

今後同じ部で活動するわけだから、私も包み隠さず話すことにした。

「でもさ、あの言い方、ボクたち込みで全国行くつもりってことだよね?」

「無謀じゃないか? 舞田が教えてくれているとはいえ、俺たちはまだ実質初心者だし」

「ね〜。去年も、舞田がいなきゃ弓道部は廃部だったもんなぁ」

樋口の言う通り、弓道部は先輩が抜けた結果、部員が私たち3人だけになり廃部寸前だった。部活動設立の最低人数が5人だからだ。

実績があれば存続を考慮すると教師に言われ、私たちは全員個人戦で県大会に出場した。

私は中学の頃から試合経験があるから問題なかったけど、2人は弓道を始めたばかりで予選落ちも致し方ない。

結局、県大会、地方大会、全国大会――すべてで私が個人優勝したことで、弓道部は存続させてもらえることになったのだ。

とはいえそれで練習環境が改善されるわけでもなく。見学には数人来たけど部員は増えず、細々と活動していた。

そんな状況は学年が上がっても変わることはないと、そう思っていたんだけど。

「そうかな。2人とも上達はしてるし、全国はわかんないけど、県大会までにはなんとかなるかもよ」

私がそう言うと、2人は驚いた表情になる。

「あー、舞田の彼氏って、二階堂のことだったんだ」

「え?」

「恋する乙女の顔だった」

「……それどんな顔?」

「ん」

荒垣が手元にあった愛用の鏡を向けてきた。映っているのは見慣れた自分の顔で、特に変化はない。

「ボクたち、応援するよ〜」

「うん。当たって砕けてこい」

「いや、砕けないし……」

だって二階堂も、私のことが好きだから。

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