@ 弓引く理由

県大会予選出場メンバーの選抜試験を行う前に、小休憩が取られた。

いつも通り静かなところで愁と休んでいると、同じ顔をした同級生2人が近づいてくる。

「「おーす、名物カップル」」

「おーす、スガセン、スガマン」

菅原千一と万次だ。

「何そのあだ名」

「センスない」

今思いついたあだ名で呼んでみると、千一と万次に非難された。

「そんなことよりさ、今1年で皆中なの俺たちだけだろ?」

「俺たち、お前らの射は認めてるんだ」

双子の話を要約すると、イキってる先輩を実力で見返してやろうというようなことだった。

私は女子部の主将とは中等部からの知り合いなので上手くいっているけど、男子は違うようだ。

というか、この双子に関しては外部受験組ということよりも態度が原因だと思う。

「まあ中てれば選手には選ばれるんだし、普通にやればよいのではー?」

愁は的中命じゃないからかノーコメントでゼリー飲料を吸っていた。

双子が何か言っているが、2年生の登場により話は中断させられた。

「お前ら1年は、先輩に席を譲れって言ってるんだ」

坊主頭の湯島先輩を引き連れて現れた樺島先輩は、ザ・運動部なことを言い出した。いかにも双子とは相容れないタイプだ。

男子は大変だな〜と思って眺めていると、黙って話を聞いていた愁がまさかの行動に出る。

「場所をあけろということですか? どうぞ」

物理的に席を譲った愁。しかしボケではなく真面目にやっている。私は思わず笑ってしまった。

「愛生、何か面白いことでもあったのかい?」

「愁が一番面白いよ」

「そうか……」

愁、天然すぎる。そして何でちょっと嬉しそうにしているのかよくわからない。

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