2
******
【総司視点】
「そっか、瀬多くんは親の仕事の都合なんだ。もっとシンドい理由かと思っちゃった、はは」
「よくある理由だよ」
転校が特別な理由によるものじゃないと知った里中さんは拍子抜けだったのか、でも少し安心したように笑った。
「――ここ、ほんっと、なーんも無いでしょ? そこがいいトコでもあるんだけど、余所のヒトに言えるようなモンは全然……」
染め物や焼き物なんかも有名らしいが、高校生である自分にはさほど注目することのないものだ。
「ああ、あと、雪子んちの"天城屋旅館"は普通に自慢の名所!」
里中さんがそう言うと、天城さんは少し苦い顔をした。
「え、別に……ただ古いだけだよ」
「"隠れ家温泉"とかって雑誌とかにもよく載ってんじゃん。この町で一番立派な老舗旅館でね、雪子はそこの、次期女将なんだ。雪子んち目当ての観光客とかも来るし、この町それで保ってるよね、実際」
「そうなのか」
「……そんなことないけど」
その話はあまりされたくないのだろうか、天城さんは複雑そうな表情だ。
「ね、ところでさ、瀬多くん。雪子って美人だと思わない?」
思う。だが初対面で面と向かって言うのもなんだか気が引ける……。
「千枝、そういうの答えづらいと思うけど……」
今まで黙って会話を聞いていた日向が助け舟を出してくれたが、里中さんは話を続けた。
「あ、それもそっか。……うーん、でも、学校でもすごいモテんのにさ、彼氏ゼロ。おかしくない?」
「や、やめてよいきなり。ぜ、全部ウソだからね。モテるとか、彼氏ゼロとか! あ、違った、えっと違うから! 彼氏とか要らないし! もう……千枝!」
「ははは、ごーめんごめん。だって折角なのに、ノリ悪いんだもん。てかさ、朝陽もだよね。超モテんのに、一人も彼女作んないの」
「そうなのか?」
「えっ、いや僕は、そういうのはいいかな……」
日向は苦笑いをしながらあいまいに誤魔化した。
「2人ともホントもったいないわ……って、あれ、何だろ」
里中さんの視線の先には、KEEP OUTと書かれた黄色いテープとブルーシート、近くにパトカー数台が停まっていた。
周りを数人の野次馬たちが囲んでいる。半数以上が主婦だった。
「恐いわねえ。こんな近くで、死体だなんて……」
……恐がっているようには見えないが……。
「え……今なんて? 死体!?」
里中さんが驚愕して声を上げると、テープの向こうから刑事らしき男性が――よく見たら堂島さんだった――こちらに向かってきた。
「おい、ここで何してる。……ん? 朝陽じゃないか。もう総司と友達になったのか?」
「あ、はい。ついさっきですけど」
「朝陽と瀬多くん、知り合い?」
「コイツの保護者の堂島だ。朝陽とは、昔近所付き合いでな。あー……まあその、仲良くしてやってくれ。とにかく4人とも、ウロウロしてないでさっさと帰れ」
堂島さんがそう言うと同時に、若い刑事が目の前を走っていき、道の端で嘔吐した。
「足立! おめえはいつまで新米気分だ! 今すぐ本庁帰るか? あぁ!?」
「す……すいませ……うっぷ」
「たぁく……顔洗ってこい。すぐ地取り出るぞ!」
堂島さんが戻って行き、足立と呼ばれた若い刑事がそれを追いかけていった。
「さっきの校内放送ってこれの事……?」
「アンテナに引っかかってたって……どういう事なんだろう……」
「ジュネスに寄って帰るの、またにした方がよさそうだね」
「うん……」
「じゃ、私たちここでね。明日から頑張ろ!」
そう言って、3人は帰って行った。
……そういえば聞き忘れたけど、やたらと親しげなあの3人はどういう関係なんだろうか。