番外編:キメツ学園 誕生日回
※キメツ学園設定の過去編です。捏造あり。
※転生、前世の記憶があります。
2月8日。
それはニワトリの日だったり、郵便マークの日だったり、事始めの日だったりするが――冨岡義勇の誕生日である。
明野は毎年義勇に誕生日プレゼントを用意していたが、今年のプレゼントは例年の比ではない。そう自負していた。
義勇は今年で18になる。
となれば、渡すべきものはもう
「はい、これ誕生日プレゼント」
放課後、義勇の部屋を訪れた明野は開口一番にその話題を切り出した。
「ありがとう」
渡されたのはクリアファイルに入った薄めの紙だった。
一瞬手紙でもしたためたのか思ったが、そうではないことに気付く。
義勇は性急に紙を取り出して、2人の間にあるローテーブルの上に広げた。
「……書いていいのか」
「書いてくれなきゃ困るの」
明野が差し出したのは婚姻届だった。
「嫌なら、いいけど」
「嫌ではない。だが、まだご両親に挨拶もしていない」
「これ、うちのお父さんがお役所から持ってきたんだよ。書いてから挨拶に来いって」
それを聞いた瞬間、義勇は通学用のリュックからペンケースを取り出し、ボールペンを握った。
「……手が震えるな」
義勇は慎重に記入する。
「……書けたぞ。お前も書いてくれ」
半分が記入された婚姻届を明野に向けると、義勇は明野の手元を見つめた。
「書いていいの?」
「書いてもらわなくては困る」
明野が記入する間、義勇が口を開く。
「学生の身だ、まだ早いと言われるだろう。だが遅かれ早かれお前とまた結婚したいと思っていた。できれば俺から言いたかったが」
じわじわと赤くなる明野の頬に満足感を覚えた義勇は、その高揚のあまり普段よりも饒舌になる。
「
「! そうだね」
「まだ何十年と続く生涯をお前と共にできると思うと、嬉しいな」
「う、うん」
「顔が赤いぞ」
「誰のせいだと思ってるの」
「お前の表情を変えるのは全て俺がいいと思っている」
義勇は今世でもそれほど喋るタイプではなかったと明野は記憶していた。
こんなにストレートに口説かれたのは、付き合い始めるとき以来かもしれないと思い返す。
「いつ出しに行こっか?」
「これから行くんじゃないのか?」
「勝手に籍入れて挨拶に行ったら、お父さんもさすがに怒るんじゃないかな。ていうかまだ保証人のとこ空欄だし」
「そうか……早くしたいところだが。保証人は姉さんと鱗滝さんに頼もう」
しゅん、と俯いた義勇をつい可愛いと思った明野だが、それを口に出せば更なる甘い言葉で反撃を食らうことになるため黙っておいた。
ちなみに義勇の両親は海外で仕事をしているため、すぐに保証人は頼めない。
「ねえ義勇、プレゼント、もう1個あるんだけど」
「そうなのか?」
「うん。あのね……」
明野はもじもじと照れながら言い淀む。
義勇は正直言って期待した。
「お前をくれるのか」
「えっ、な、なんでわかっ――」
明野の言葉をまたずに義勇はその口を塞いだ。
あとはもう、言うまでもない。
*****
後日、明野の両親に挨拶に行った義勇は緊張のあまり、
「娘さんは俺がもらった」
などと誘拐犯のようなことを言い、明野の父を怒らせたのだった。