やっぱり何も覚えてない同期の女
※転生現パロ色々捏造回。ギャグです。
「また何も覚えてないのかお前は!!」
キメツ大学に入学した冨岡義勇(19)は、入学式の会場で見つけた前世の妻、清藤明野を捕まえ怒鳴りつけていた。
「いや、誰なのきみ。いきなり怖いんだけど……」
頭を抱えた義勇。一方で、普通に怯える明野。
「学部と学科はどこだ。俺は教育学部スポーツ科学科だ。入学式が終わったら俺の家に来い。逃げたら一生付き纏うぞ」
「言いたくないし、行きたくない。ていうか通報するよ」
「やめてくれ」
明野を見つけた喜びと前世の記憶がないことへの怒りで、義勇はもはや情緒がおかしくなっていた。
「明野」
「何で名前知ってるの」
「俺はお前の夫だ」
「違うけど!?」
「後でわからせる。そろそろ式が始まる時間だ」
そんなこんなで入学式を終えて、帰路につこうとした明野は、案の定義勇に捕まった。
「なんなのきみ! 女に飢えてるならヤリサーに入りなよ! きみなら選び放題だよ!」
「馬鹿を言うな! 俺はお前にしか興味はない!」
「初対面だよね!?」
「違う。俺は冨岡義勇だ」
「冨岡、義勇……?」
「そうだ。……思い出したか」
「いや、知らない」
「今の意味深な反芻は何だったんだ……!?」
とにかく思い出させてやると意気込み、義勇は明野を無理矢理自宅に連れ込んだ。
そしてご丁寧に新品の座布団に座らせ、茶と茶菓子を用意してもてなした。
「いいか、お前はとにかく早く前世の記憶を思い出せ」
「すっごい意味わかんないんだけど、なに、なんかそういう勧誘?」
「違う。もういい、とりあえず俺を殴ってみろ」
「変態なの?」
「この際何でも構わん」
明野はドン引きしながらも、この状況で逆らうのも怖いので義勇の肩を殴った。いや、軽く小突いた。
「舐めているのか!」
「殴れるわけないよ! 怖すぎるから!」
「なら強引に行くぞ」
義勇は明野の腕を引っ張り、仰向けになった自身の上に座らせた。馬乗りである。
入学式用のスーツを着ていた明野は、足を開かされたことでずり上がったタイトスカートの中を義勇が普通にガン見していることに気付いて、
「どこ見てんだ変態! ――あ」
義勇の顔面をぶん殴った。
そして、あっさり前世を思い出した。
「……義勇くん、生きてる?」
義勇の上から急いで降りた明野は、いつかのように義勇の頬をぺしぺしと軽く叩く。
「……良い一撃だった」
「きみさ、本当にヤバいと思うよ」
「お前ならこれで思い出すと思った」
「にしたって、……はぁ、もういいや。ごめん、キモいから結構本気で殴っちゃった。大丈夫?」
「謝るな。俺は問題ない。だが、キモいは傷つく」
問題ないとは言うが頬はしっかり腫れていた。
「せめて冷やしなよ」
「ああ」
義勇はのそのそと動き出し、冷凍庫から適当な保冷剤を出して頬にあてる。
明野は鞄からハンカチを取り出し、その保冷剤を包んで義勇の頬にあて直した。
「それより、学部学科はどこだ」
「……理学部、物理学科」
「また男が多いところに。お前、当然独り身だろうな。俺はお前に操を立てているが」
「操って……。きみが心配するようなことはないよ、幸いね」
「よし、籍を入れよう」
「急すぎるでしょ」
「どのみちそうなる。早い方がいい」
「はぁ、できれば入学前に会いたかったよ。手続きが面倒」
その言葉に、義勇は口角を上げた。ムフフと。
「相変わらず不気味な笑顔だね」
「お前は相変わらず美人だ」
「いいからそういうの」
「そのふてぶてしい態度が照れ隠しなことはもう知っている」
うぐ、と渋い顔をする明野に構わず、義勇はスマホを取り出して電話をかけ始めた。
「もしもし、姉さん? 俺だ。突然だが結婚することになった。悪いが父さんと母さんに連絡を取ってほしい。俺では少し……揉める気がする」
電話の向こうから女性の慌てた声が聞こえてくる。明野は"こいつマジか"と思ったがもう聞かなかったことにした。
それから出されたまま放置していた茶に口をつける。
何やら義勇は姉と揉めているようだが、明野は諦めの溜息と共に茶菓子に手を伸ばした。
*****
色々割愛するがなんやかんやあって義勇と明野は籍を入れた。
その頃にはかつての鬼殺隊の面々とも次々に再会していた。
中でもカナエと再会した際には場所も構わずお互いつい抱きしめ合ってしまい、なんならちょっと泣いた。
その後カナエと明野の百合疑惑が学内でまことしやかに噂され、義勇が火消しに奔走するのはまた別の話である。