「怪盗団って知ってるか?」
【暁視点】
「なんか……いるな」
いつも通りメメントスで依頼をこなしていると、モナが唐突に言った。
「え、なんかって何?」
至極当然な疑問をパンサーが投げかける。
「ワガハイ達以外の誰かが、メメントスにいる……ような気がする」
「シャドウじゃなくて?」
「いや、違う。気配がなんとなく、ニンゲンっぽいんだ」
「なんだそれ、もっとハッキリわかんねーの?」
「そんなに言うなら、オマエがやってみろ!」
今にもケンカを始めんとするスカルとモナを諫めるように、今度はフォックスが口を開いた。
「しかし、ペルソナを持っていない生身の人間だとしたら、危険じゃないか?」
確かに、普通の人間がペルソナ無しにパレスやメメントスで生き残れるとは思えない。
まだ依頼は残っているが、こちらを優先した方が良さそうだ。
「シャドウに襲われたりする前に見つけたいな。探してみよう」
「うん、私も賛成!」
モナ、スカル、フォックスもそれに頷き、迷い込んだと思われる人物を探すことにした。
*****
しばらくモルガナカーで探索していると、曲がり角の先から光が見えた。
「そこだ!」
急いで向かうと、
「ペルソナ!」
見たことのないペルソナ使いがいた。
彼は――背格好からしておそらく同年代くらいの男だ――召喚したペルソナで複数のシャドウを倒していく。
あまり苦戦をしているようには見えなかったが、敵対する意思がないことを示すため、俺達も加勢することにした。
「奪え、アルセーヌ!」
突然大人数で現れたためか少し驚いていたようだが、どうやら受け入れてくれるらしい。
シャドウを倒し終えたところで、改めて彼の方に向き直った。
全体的に黒い軍服のような衣装で、右肩には真っ白な上掛けを纏っている。おそらくあれが彼の反逆のイメージなのだろう。
「はぁ……助かったよ。ありがとう」
思いの外友好的な態度に、俺たちは少し拍子抜けした。
「えっ、いやそんな、お礼を言われるほどじゃないっていうか……」
「いや、本当に助かったんだ。まだこの"ペルソナ"? っていうのの扱いに慣れてなくて。ほとんどヤケクソだったよ」
「どういうことだ?」
「実は……」
彼の話を要約すると、学校から普通に帰ろうと地下鉄に乗ったはずが、気づいたらメメントスにいて、シャドウに襲われたという。
"こんなところで死ねない"と強く思った瞬間にペルソナが現れたらしい。
「そんなことがあるのか?」
フォックスはモナに聞いた。
「まあ、ないとは言いきれねーな。ペルソナは反逆の意志みたいなもんだ。ペルソナに目覚めたってことは、コイツにもオマエらと同じような事情ってもんがあるのかもしれない」
なるほどな、とうなずくフォックス。
「なあ、お前、怪盗団って知ってるか?」
「怪盗団? ああ、あの、鴨志田先生の一件で聞いたことはあるけど」
「鴨志田"先生"……? もしかして、秀尽の生徒か?」
「え? ああ、そうだよ」
「はあ!? マジかよ!?」
「もしかして君達も?」
スカルの反応を見て、彼も気づいたらしい。
「ああ。オレは洸星だが、他の3人は秀尽の2年だ。知り合いということはないか?」
フォックスにそう聞かれ、彼はためらいもなく仮面を外した。
「2-Dの戸川歩だけど……知ってるかな?」
「戸川君!?」
パンサーが驚きの声を上げた。
しかし驚いたのは彼女だけではない。戸川とはちょうど先月、ひょんなことから接点を持った――というのもあるが、彼は学校でもそれなりに有名だ。理由は簡単、"女子にモテる"。
「う、美しい……」
フォックスが指で構図を切るポーズを取り始めた。どうやら男子にもモテるようだ。違うか。