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ある真夏日。墓参りから戻ったお登勢は、一人の女を連れていた。

「お登勢様、そちらの女性はどうされたのですか?」

玄関前の掃除をしていたたまがきく。

「旦那の墓前でブッ倒れててね、供えモンの腐った饅頭勝手に食って腹下したンだよ」

「……すみません、お腹空いて動けなくて……でも一応断りは入れました……!」

お登勢に肩を貸されて店に入りつつ、女は苦しげに言った。

「ンで、旦那は何か言ってたかィ?」

「あはは……亡くなった人は口なんか利いてくれませんよ……だから今度代わりの饅頭を持っていく約束しました。勝手にですけどね」

どこかできいたようなセリフだとお登勢は思ったが、女の持っていた荷物をテーブルに置いて、とりあえず厠まで運んだ。

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「あの……ありがとうございます。なんとお礼したら良いか……」

「礼なんていらないよ。あたしが好きでやったんだ」

先ほどよりだいぶ顔色の良くなった女は、お登勢に頭を下げていた。

「それよりアンタ、なんだってあんなトコにいたんだい?」

「ああ、ええと、人を探していて。長州から来たのですが、道に迷ってしまって……」

「女がそんな物騒なモン提げて、よく江戸まで来られたもんだ」

お登勢は女の左腰に提げられた鍔無しの刀を顎で示した。

だが女は困ったように笑うだけで、お登勢も深く追求はしなかった。

「そういや、名前は何てんだィ? あたしは登勢っつってね、ここの店主をやってんだ」

「高杉梅と申します」

自己紹介を終えたところで丁度良く店の扉が開き、たまが入ってきた。

「初めまして、たまと申します」

「あ、高杉梅です」

「梅様ですね。データに加えておきます」

「データ?」

「ああ、この娘はからくりでね。ここの従業員さ。――たま、ちょいと上に家賃払うよう言ってきておくれ。昨日は珍しくまともな依頼入ってたみたいだからねェ」

「了解しました」

そう言ってたまは店を出て行き、その少し後に上から爆発音のようなものが響いたが、お登勢は慣れているのか特に反応しなかった。

「梅、アンタ、人を探してるって言ってたね」

「え? ああ、はい。10年ほど前に別れた、というか、はぐれた夫を探していて」

「結婚してたのかィ?」

お登勢は驚いたように言った。

「はい……とは言っても、その夫が今生きているかもわからないのですが」

「……そうかい。ま、探すってんなら、ウチの2階が万事屋をやっててね。いわゆる何でも屋さ、行ってみるといい」

「万事屋ですか……。ありがとうございます。行ってみます」

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