A-4
・日常 知り合ったばかりの頃
【ジュン視点】
おひいさん経由で最近話すようになった3年の#name3##name4#先輩は、信じがたいことにオレのファンだという。
向こうもすでに『ユニット』としてコズプロに所属しているアイドルで、芸能界でもそれなりの地位を確立している人だ。
そんな目上の人間にファンだと言われても実感がなく、最初は何かの企みか嫌がらせかと疑いもしたが……どうやら本当に、ただ純粋にオレーーというか『Eden』のファンなんだということが最近わかってきた。
ともあれ、今日もおひいさんに弁当を届けるべく3年の教室を訪れると、奴は以前と同じく#name3#先輩と一緒に机を囲んで昼飯を食っていた。
「おひいさん、あんたわざと弁当忘れてんじゃねぇっすか?」
「ジュンくん。遅かっ――」
「えあっ、ジュンくん――じゃなくて漣くん!?」
オレがおひいさんに声をかけると同時に、#name3#先輩はびくりと身体を揺らし椅子から立ち上がった。
何故か名前を呼び直した先輩に頭を下げて挨拶を返す。
「あぁ、こんちわっす、#name3#先輩。毎度おひいさんがたかってるみたいですみません」
「い、いや、大丈夫! 巴くんにはいつも仲良くしてもらってるし、僕も楽しいから!」
「そう言ってもらえると助かります。よかったっすねぇおひいさんは、良い友達がいて」
「それは否定しないけどね。それより翔太くん、ジュンくんに会ったくらいで緊張しすぎだね? ぼくとは普通に話してるのに納得いかないね!?」
確かに、#name3#先輩はさっきから妙にそわそわしているというか、おひいさんの言う通り緊張しているように見える。
先輩たちの『ユニット』のライブ映像なんかも見たことはあるが、彼らの堂々としたパフォーマンスとは正反対の態度だった。
あのライブ映像を見て以来、オレもオレで皇先輩たちの『ユニット』のファンになってしまったわけだが、相手がこうなもんだからなんとなく言い出せずにいた。
「まあ、巴くんは編入してきてからずっとクラスメイトだし……」
「あの、漣くん……」
「はい?」
「あ、握手を……してくれませんか……?」
「握手? 別にかまいませんけど」
むしろ何でそんなに控えめに頼むんだと思いつつ、#name3#先輩の手を握った。
「っ、あ、あ……!」
何で喘ぐんだ!? と驚いたオレは反射的に手を離そうとしたが、#name3#先輩にガッチリ掴まれていて離れない。意外と握力がある。
#name3#先輩を見れば、頬を赤らめて恍惚とした表情だった。そんなに嬉しいのか、握手が? 先輩だって握手会くらいしたことあるだろうに。
「僕もう一生手洗わない……」
「ジュンくんの手を触ったなら洗ったほうがいいと思うね」
「どういう意味っすかそれ。というか、#name3#先輩も普通に手は洗ってくださいよぉ〜」
「洗ったらまた握手してくれる?」
まだ手を握られたままだったが、自分より背の低い#name3#先輩はオレを上目遣いに見上げてそんなことを聞いてきた。
可愛い系で売っている人だから、そういう仕草には慣れているんだろうけど、正直かなりかわいー―いや、何を考えてるんだオレは。
年上の同性だぞ。
「ジュンくんに#name4#くんはあげないね!!」
オレの思考がぐるぐるし始めたあたりで、おひいさんがバカでけぇ声をあげながらオレたちの手を離させた。
「はぁ、僕、これで今日一日がんばれるなぁ……」
おひいさんガン無視で離されたばかりの手を見つめる#name3#先輩。そして無視されたことに怒るおひいさん。うるせぇ。
学園のツートップの『ユニット』のリーダーたちがこれって、玲明の先行きが不安になってきた。
……あと、"消毒しようね"とか言って#name3#先輩と握手してるおひいさんはなんなんすかねぇ〜?
「日和くんの手は柔らかくてしなやかだけど、ジュンくんのはおっきくて硬かった……すごい……!」
「ちょっ、変な誤解生むんでその言い方やめてもらえます!?」