D 黛千尋
【黛視点】
新学期恒例の校内大掃除、オレの所属する班は図書室が担当だった。
新しく入荷した本や返却されたばかりの本を棚に並べるという、もはや掃除ではない作業――だが楽でいい。
誰も読まないような古びた文庫本や図鑑、辞書なんかがほとんどだった。
順調に仕事をこなしていき、そろそろ終わりかという頃。シリーズものの最新刊を仕舞おうと探したが、既刊が見当たらない。
似たような背表紙の並ぶ棚を見回してはみたが……。
「それ、もしかしてこのシリーズ?」
「っ!?」
突然声がして、驚いて隣を見るとそこには小柄な女子がいた。
「お前、いつからそこに……」
「え、最初からいたけど」
――まさか自分が"こっち側"に回るとは思ってもみなかった。
「ああ、私影薄くて。驚かせてごめん」
そう謝るソイツからはさほど反省した雰囲気を感じなかったが、もしかしてオレも他からはこう見られているのか、という妙な感覚に陥った。
「いや……」
長い黒髪に大きな黒目、細っこい足はこの学校じゃ少数派の黒タイツ。
そんな黒まみれの中で際立つ白い肌に桜色の唇……客観的に見て整った容姿のヤツだ。
何故オレにすら気づかれないレベルで影が薄いのか疑問でならない。
「黛くん。その本、多分こっちの棚だよ」
そう言いながらオレの手から本を取り、棚に戻すソイツ。
「ああ、悪い……#name1#」
名前を呼べば、少し驚いたような表情になった。
「名前覚えてたんだ。私のことすぐ覚えてくれる人、あんまりいないんだけど」
「お前、よく見たら結構目立つからな」