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練習を始める前に桃井とリコによるJabberwockの分析結果を聞くため、ミーティングルームに集まった。
親善試合のビデオを見ながらの解説だ。
全員強敵であることは言うまでもないが、中でも特に警戒すべきは"神に選ばれた躰"を持つジェイソン・シルバーとリーダーであるナッシュ・ゴールド・Jr。
理不尽ともとれる強さを持つ相手に、キセキの世代はそれぞれ闘志を燃やしていた。
「……それから、もう一人」
今すぐにでも練習を始めたいと言わんばかりの選手達を落ち着けるように、桃井の声が響いた。
「Jabberwock唯一の日本人選手、銅島#name4#」
「あー、そういえばいたっスね。なんかすげー小さい奴」
ナッシュやシルバー達の後ろに隠れている彼は、あまり印象に残っていなかった。
「銅島#name4#。ポジション・SG、身長165cm、体重55kg。体格には恵まれず、身体能力もおそらくキセキの世代には及びません。ですが、彼の武器はその小柄さを活かした俊敏で繊細なボール捌きと3Pシュート」
3Pと聞いて、緑間はわずかに顔を強張らせた。
「体格的ハンデがあるので長距離シュートは積極的には撃ちませんが、その成功率は9割近い。……チームでは最年長の20歳。性格は温厚かつ冷静で、シルバーのような血の気の多いメンバーのストッパー役」
「……あの体格差で、止められんのか?」
火神がつぶやいた疑問は尤もなものだった。
「そこはなんとも……。あ、それと、銅島さんは高校までは日本にいたんですが……出身校は帝光中、そして洛山高校」
「えっ、帝光出身!? 聞いたことないんスけど!? ていうか洛山って、赤司っちと一緒じゃないスか!」
「ああ、それについては桃井から事前に聞いた。俺から監督に確認したが、確かにいたらしい。それも、1年からレギュラー入りするほどの選手だったそうだ」
練習態度は至って真面目で学業においても優秀、実力に驕ることもなく謙虚で処世術に長けている――というのが、洛山の監督からの評価らしい。
だからこそ、何故Jabberwockに所属にしているのかわからない、とも。
「ええ。帝光の過去の資料を見ても、彼は常にレギュラーとしてプレイしていました。それから、Jabberwockのプレイスタイルには否定的ながらも、いざ試合となれば先日のようなパフォーマンス寄りなプレイもするため、二重人格だとか言われてたみたいです」
まるで赤司だ、と皆は思ったが、銅島#name4#と赤司征十郎との決定的な違いは天才であるか秀才であるかだ。
*****
日本のチームとの再戦前日に、それは起こった。
「えーと、ここ、で合ってるかな……」
初めて訪れた六本木の夜のお店、もといキャバクラの前で#name4#は溜息を吐く。
景虎から連絡があったのはついさっきだった。
ナッシュ達が来日以来好き勝手しているらしいというのは聞いていたが、どうやら今日もらしい。
#name4#が行ったところで彼らを諫められるのかといえばそうでもないが、いないよりは遥かにマシだというのは景虎の言葉である。
かくしての店の中に入ると――入るまでに年齢確認で一悶着あったが――すでに騒ぎが収まった後のようだった。
「出遅れたかな……」
ともあれ店員らしき男性に彼らのいる場所を聞き、早足で向かった。
『黙れ下衆が。お前達こそ、首を洗って待っていろ。明日は地べたを舐めさせてやる』
ようやく部屋の前に着いた#name4#の耳に届いたのはそんな言葉だった。
聞いたことのない声だったが、流暢な英語だ。
開いたままのドアから顔を覗かせる前に、部屋から数人の少年達が出てきた。
「あれ、君達……」
おそらくナッシュ達と揉めていた相手だろう。体格の良い男ばかりだったが、なんとなく年下だろうと#name4#は直感した。
「あ? ――って、お前……!」
#name4#を見て真っ先に反応したのは青髪に色黒の少年だった。
*****
『おい、オッサン』
『なんだ悪ガキ』
不遜な態度にはもう慣れている景虎は、ややめんどくさそうに答えた。
『この辺にホテルあんだろ? 案内しろ』
『ハァ? お前ら、部屋取ってやっただろ。追い出されでもしたのか?』
景虎の返事を聞いたナッシュは舌打ちし、すぐ横にいた#name4#の頭を乱暴に掴んだ。
「うわっ、ちょっ、なに――」
抵抗する#name4#を気にも留めず、ナッシュはそのまま#name4#の唇と自身のそれを合わせた。
突然の行動に、その光景を見た誰もが驚き、動きを止める。
『こういうホテルに決まってんだろ』
#name4#を玩び満足したのか、ナッシュは相変わらずの様子で景虎に言った。
「お前ら、そういう……?」
「…………えっ? いや、違います!! ナッシュが勝手に――」
我に返った#name4#は日本語で反論した。
『うるせぇ。行くぞ』
『あぁ? お前らヤんのかよ。オレも混ぜろよ』
『好きにしろ』
『やだよ! シモのビョーキうつされそう』
『んだとコラ!』
この状況でまるでコントのようなやり取りをする3人に、英語を聞き取れた数人はポカンとするだけだった。