@ カンヤ祭-1

【#name2#視点】

総務委員会に古典部の売り場拡大を依頼するため、私はえると連れ立って校内を歩いていた。

……が、このお嬢様は一筋縄ではいかない。それはわかっていたはずなのに、私はもうへとへとだ。

カンヤ祭の雰囲気につられたのか、えるの足取りも浮かれている。私は度々えるの制服の袖を摘んで軌道修正を図っていたが、えるの好奇心を前にあえなく敗退。

その結果、写真部の部員に声をかけられて、写真を撮ることになった。

……まあ、これはあとで折木に見せるけど。

しかし、えるの衣装はメイドやチアリーダー、着ぐるみ、モダンガールといった清楚かわいい路線なのに対して、私が着させられているのは明らかにお色気枠だ。路線どころではない、枠である。

メイドとチアは同じような衣装だったけど、何故かバニーガールとか、猫耳とか、女王様とか……これは高校の文化祭で出して大丈夫なんだろうか。

しかし、折木は案外お色気が効く。なのでこの無茶振り撮影会を甘んじて受け入れた。

自分で着たがって着るのと、やらされて恥ずかしがりながら着るのとじゃ、全然違うのだ。そして折木には多分後者の方がより効果的。

ただまあ、そんな計算ずくだけではなくて、衆人環視の中で際どいコスプレをして写真を撮られるのは、普通に恥ずかしかったけど……。

*****

【奉太郎視点】

千反田と#name1#が地学準備室に戻ってきたのは昼過ぎだった。

#name1#は疲れた様子で、やたら荷物の多い千反田に手を引かれている。

千反田は荷物を机に置くと、壁新聞部に行くと言ってまた出て行った。忙しいことだ。

一方、解放された#name1#はふらふらと俺の隣の空席に着いた。

「おつかれ。何か収穫はあったか?」

「何も。総務委員の人にも、売り場拡大は断られた」

だろうな。文化祭はもう始まっているのだから、今から売り場をどうこうというのはあまり現実的じゃない。

それは#name1#もわかっていたに違いない。それでも千反田と一緒に行動していたのは、単に千反田の要望があったからだろう。俺だったら断るが、#name1#は案外押しに弱いところがあるからな。

千反田も#name1#の疲労度を考慮したのか、俺に"#name2#さんをお返しします"なんて言ってから出て行ったが。

千反田の置いていった荷物は、どこかの部活の展示品や景品のようだった。それをひっくり返して見るほどの興味はないが、そのB5サイズほどの紙束に写真のような質感のものが挟まっていた。

なんとなくその端をつまんで引っ張り出してみると、

「……!」

メイド服を着た千反田が写っていた。

予想外の代物に驚きつつ、紙束の隙間からは他にも何枚か同じようなものが出てくる。

なんだこれは。写真部か?

「折木、浮気……」

#name1#から心なしか悲しげな声が上がった。そんなわけがあるか。

「まさか、#name1#も撮ったのか」

「……うん……」

唇をやや尖らせて横髪をいじる#name1#を横目に、紙束を漁った。

*****

【#name2#視点】

「少し出てくる。店番は頼んだぞ」

えると私の写真をじっくり見た折木は、ふぅ、と息を吐き、席を立った。トイレか?

そして何枚かの写真を机に置くと、残りを手にしたまま歩き出す。

「折木、写真持ったままだけど」

「………………。汚したらすまん!」

折木は走り去った。折木が走るなんて、余程切羽詰まっていたんだろうか。健康に悪い。

ーーじゃなくて。汚したらすまんって何。

折木が置いていった写真を見ると、えるが写っているものだけで。

「……あ」

ふうん。へえ。そうなんだ。

まあ、悪くない気分だった。

*****

【奉太郎視点】

俺が一仕事・・・を終えて地学準備室に戻ると、扉が閉まっていた。扉の外側には『準備中。◯時再開します』と書かれたメモ用紙がセロハンテープで貼り付けられている。腕時計を見ると、予告された時刻は数分後だった。なんだこれは。

ちなみに写真は汚していない。汚していないが、これは俺が責任を持って買い取らせてもらおうと思う。

それより、これは#name1#がやったのだろうか。

ともあれ中に入ろうと扉を開けると、そこには――バニーガールがいた。

「あ」

#name1#は俺の方を振り返ると、俺が口を開く前にすぐに言い訳を始めた。

「あの、これ、使い回すのは衛生的に、あの、アレだから、あげるって言われて」

いつにも増してたどたどしい言葉回しだ。

衛生的に、というか、それを着こなせるのは#name1#くらいのものだろう。

とりあえず、部室の扉を閉めた。貼り紙は剥がさないでおこう。

*****

「それで接客しようとしたのか?」

「いや、検討してただけ」

「するなよ」

「だって、人来ないし……。話題性、として」

バニーガールのまま制服のカーディガンを羽織った#name1#は、また俺と並んで席に着く。脱ぎたてのセーラー服が適当な椅子の背もたれに引っ掛けられていて生々しい。

「せめて俺がいるときにしろ」

「折木が戻ってくる頃に着替え終わるようにした」

こいつはこう、計画性があるから厄介だ。

#name1#じゃなくたって、バニーガール姿の女子1人でこんな人気のない部屋にいたら、いくら学生主体の文化祭とはいえ危険だろう。

「……だいたい、俺にその据え膳を食うなと言っているのか?」

「食っていいよ?」

「食えるか! こんなところで」

#name1#は首を傾げて普通に答える。なんでそんなこと聞くの? といった感じだ。

「じゃあ今日はこれ着て帰るから、うち来る?」

「着て帰るって、変質者か!」

「上から制服着るって意味だったんだけど……」

だとしても、いや、だとしたら、それはとんでもない生殺し状態なんだが。

「だって、そうすれば、折木がずっと私のこと考えてくれるかと思って」

「だいたい、そんなことをしなくても俺はーー」

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