@ 8.3抗争 前編

【夢主視点】

「私お祭りって行ったことないの。#name2#ちゃん一緒に行きましょう?」

イオリにそう誘われて、イオリの用意した浴衣を着せられて武蔵祭りに連れ出されていた。

私からすれば普通の祭りだが、いいとこのお嬢様で箱入り娘のイオリにはすべてが新鮮に見えるらしく、さっきからずっときょろきょろしている。

イオリの気が済むまでしばらく屋台を巡っていると、にわか雨が降ってきた。

2人とも傘を持っていなくて雨宿りできそうな場所を探していると、見覚えのある女子が1人で木の下に立っているのが見えた。

「あら、ヒナちゃん?」

「あ……イオリちゃん、#name2#ちゃん」

「どうも。タケミっちと一緒じゃないんですか?」

「それがーー」

誰かと電話してからどこかに行った後、何故かガムテでぐるぐる巻きにされたタケミっちを救出したはいいものの、またどこかに行ってしまったらしい。元の場所に戻ってきたら、別の男と走り去っていくのが見えたとか。詳細はわからないが何か揉め事に関わっているのは間違いないだろう。

「とりあえず、タケミっちを追ってみます?」

「うん、ヒナもそうしようと思ってたとこ!」

タケミっちが走って行ったという方向を辿って行くと、明らかに大勢がケンカしている声が聞こえてきた。駐車場のあたりだ。

「あっ、ヒナ!」

「エマちゃん!」

少し離れたところにいた浴衣姿の女子が橘さんに声をかける。彼女の反応からするに友達のようだ。

「ドラケンが……っ!」

刺された、と。彼女がそう言うと同時に、ドラケンらしき人物を背負って歩いている男が道の向こうに見えた。おそらくタケミっちだ。

「私は救急車を呼ぶわ。みんなはあの人を追って」

イオリが携帯を取り出すのを見て、私たちは先にタケミっちたちを追う。

「タケミチ君!!! 今、救急車呼んだから!!」

「ドラケンは!?」

「大丈夫、生きてる!!」

振り返ったタケミっちはドラケンを背中から下ろし、道路に寝かせた。

途中で合流したエマとという子は元々ドラケンと祭りに来ていたらしい。そこにイオリも追いついて、救急車を待つ。

「イオリ、救急車、あとどのくらいで来ます?」

「わからないわ。お祭りと雨で道が混んでるのかも……」

とりあえず止血しないとまずい。私は着ていた浴衣を脱いで適当に折り畳み、傷口に押し当てた。それを帯で固定しているとドラケンに腕を掴まれる。

「おい、ンなことに浴衣使ってんじゃねぇよ」

「いや、下に服着てるんで大丈夫っす」

どうせまた知らない男に絡まれるだろうと思って、浴衣の下にTシャツとショートパンツを着てきたのは正解だった。もちろんドラケンが言いたいのはそんなことじゃないとはわかっているがとぼけておく。

「あれあれぇ!? 死んでねーじゃん!! ドラケンちゃん!!」

「カスが何余計な事してくれちゃってんだ?」

「なんでザコミチいんのぉ!? 誰かガムテープ買ってこい!」

クソみたいなタイミングで東卍の特服を着たやつらが絡んできやがった。橘さんが言ってたタケミっちのガムテ巻きはどうやらこいつらの仕業のようだ。

「ありがとな、タケミっち。ヒナちゃんたち連れて逃げろ」

エマさんの制止を聞かず起き上がったドラケン。

「オレは大丈夫だ。早くしろ、タケミっち」

私はケンカに加われるから残ると言おうとすると、

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"!! 情けねぇ!!」

タケミっちが突然叫び出した。

「ヒナ、下がってて」

そう言って、急にしゃきっとしだしたタケミっちが不良たちに挑んでいき、啖呵を切った。

喧嘩賭博の決着がついてない、というタケミっちに相手は血管を浮き上がらせてイラつきを露にする。

するとドラケンがタケミっちに1億賭けると言い出し、橘さんたちも加勢した。

「残念、乗るタイミング逃しちゃったわ」

イオリが小声でそう言ってくる。確かに。

ともあれ馬鹿にしたように笑いだした不良たちだったが、ドラケンたちの真剣な顔に少したじろいだようだった。

が、タケミっちの拳は当たるでもなく避けられるでもなく、相手の隠し持っていた短刀で刺されていた。

ガキのケンカで武器を持ちだすような奴らだ、ハナからタイマンなんてする気がなかったんだろう。

それでもタケミっちは向かっていっては殴り返され、ついには相手にしがみつき、噛みついてまで止めていた。

体勢を崩した相手にチョークスリーパーを決めるタケミっち。めちゃくちゃな戦い方だったけど、相手は倒れていた。

橘さんが駆け寄ろうとするも、まだ不良たちの残党がいるため引き止める。

「ヒナ、エマちゃんたちと逃げて。オレだけならなんとかなるから、頼む!」

橘さんは一瞬躊躇ったがすぐに頷き、私たちのところへやってきた。

「悪いけど、私は残りますよ」

「だめだ#name2#、お前も逃げろ」

「そうだよ、それに女の子が残ったってーー」

ドラケンとエマさんには止められたが曲げるつもりはなかった。

「ケガしたタケミっち1人であの人数は無理でしょ」

「#name2#ちゃん頑固だから置いてって大丈夫。ヒナちゃんとエマちゃんは私と一緒に大通りの方に行きましょう。救急車が来たら誘導しないとだし」

イオリはそう言って2人の手を取り強引に走り出した。こういうときばかりはイオリの行動力に感謝だ。

「オマエさぁ、お嬢様学校行ってるわりにバカだよな」

「ひどくないすか、それ」

ドラケンはそう言って立ち上がる。

「ドラケン君、#name2#ちゃん……天国ってどんなっスかね?」

フラフラしながらタケミっちはそんなことを言い出す。

「ハハ、テメェは地獄行きだよ」

「オレ悪ィ事してねえっスよ」

軽口を叩き合う2人を見て、状況は圧倒的に不利なのに何故か安心を感じてしまった。

「あと、コイツはマイキーの彼女ヨメだから、傷つけたらあとでぶっ殺されんぞ、タケミっち」

「えぇっ、オレがですか!?」

「ちょっ、だから違いますって!」

こんな状況でも冗談を言うドラケンだったが、明らかに消耗しているのが見て取れた。

「アンタら、私のデコピンでも倒れそうっすよ」

「だってよ、タケミっち」

「ハハ、ドラケン君こそ」

雄叫びを上げながら向かってくる不良たちに、こっちも気合を入れて、疲弊している2人よりも速く敵に一発入れようと動く。

先頭にいたヤツに拳をブチ込もうとすると、横から何者かが飛び出してきて同じ相手をブン殴っていた。

「「え?」」

ついその人と目が合って驚き合ってしまったが、タケミっちの呼びかけでハッとしたように話し出した。

「アッくん?」

「なーにメソメソしてんだよ、泣き虫のヒーロー」

それから別の男たちが横の草むらから飛び出してきた。

「溝中五人衆参上!!」

「みんな……っ!」

タケミっちのダチらしい4人組は事情を知って加勢に来たらしい。

「って、あー!! あの子はッ!!」

メガネの人がこっちを指差してなんか言っていたが、そんなことには構わず敵は殴りかかってくる。

当たらなければ大丈夫だ。大振りなパンチを避けつつ殴り返す。

相手の方が人数は多かったけど、助けも来てるし何とかなってるだろうと思って他の様子を見ると、

「カス共が群れたからってよー、何ができんの?」

割とボコられていた。マジか。

「余所見してんじゃねーぞこのアマ!!」

「っ、いって……」

そいつの言う通り、余所見してたら殴られて尻もちをついてしまった。だが相手が女だからナメてるのか、そこまでのダメージはない。口の中が切れて痛いけど……。

立ち上がろうとすると、さっき殴ってきたヤツがもう一度襲い掛かってきてマウントポジションを取られる。

「おいドラケン! 冥土の土産にレ〇プショーでも見せてやるよ!!」

「やめろッ!!」

下品に笑いながら私のベルトをはずそうと手をかけたそいつ。その手をそっと握ると、驚いたのか一瞬動きが止まる。その隙に適当な指を一本折ってやった。

「アンタ絶対モテねえでしょ……」

拘束も解けたので下から抜け出して、指を押さえて痛みに呻いているそいつの股間にも蹴りを入れておいた。

「それは反則だろ……」

誰かが呟いたがそんなことないだろ思いケンカを再開する。タケミっちの友達たちも一歩も引かなかった。

しばらくするとやっと救急車とパトカーのサイレンが聞こえてきた。

イオリと橘さん、エマさんも戻ってきて、不良たちは慌てて逃げ始める。キヨマサ君とやらは放置されていた。

「ドラケン君を早く救急車に!!」

赤髪リーゼントと黒髪の男がドラケンを支えて歩き出した。タケミっちも友達がついてるから大丈夫だろう。

重傷のドラケンと刺されたタケミっちが救急車に運ばれていくのを見届けてからイオリと合流すると、イオリどころか橘さんにも怒られた。エマさんには泣かれた。

「一発しかくらってないんで、ほんとに大丈夫ですって」

「そういう問題じゃない!」

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