B-3
・昼休み
とある月の27日。この日は、誠凛高校の売店で数量限定の"特別なパン"が販売される日だ。
日向たち2年生によって招集された1年生5人は、その幻のパンを買ってくるようにという命を下され、売店を訪れていた。
「マジなのか……」
――否、"戦場と化した"売店を訪れていた。
「よしっ、まずは俺が行く! 火神ほどじゃねえが、パワーには自信があるぜ!」
そう言って飛び出して行ったのは河原だった。
が、一瞬で人だかりから飛ばされる。
「歯、立たなさすぎだろっ!」
「って、よく見たらこれ、半端な力じゃ無理だぞ……」
降旗たちの言う通り、売店を囲う集団の中には筋骨隆々な男たちがいた。
「ラグビー部のフォワード、アメフト部のライン組、相撲にウェイトリフティング……!」
やつらのブロックをかいくぐるのかよ、というビビった声が聞こえてきたが、火神は逆に燃えだした。
「やってやろうじゃん!!」
勢いよくその筋肉集団の一画に突っ込んでいく火神。
しかしそのパワーを持ってしても人込みから押し出されてしまい、地面に尻もちをついた。
「This is Japanese lunch time rush!!!」
火神の頭の中には満員電車に押し込まれひしめき合うサラリーマンたちが浮かんでいた。
「やっぱ全員で行くしかねえ!」
試合中のような掛け声を叫びながら、4人は再び突っ込んでいった。
*****
一方その頃、火神たちとは少し離れた場所に黒子はいた。
「#name4#君、大丈夫ですか」
「! テツヤ、来てたんだ」
「はい、バスケ部の先輩たちに言われて」
「俺もー」
未だひしめき合う人だかりからやや離れたベンチに座る#name4#は、パンの詰め込まれたビニール袋を横に置き、疲れた様子だ。
「幻のパン、買えましたか?」
「ああ、うん。なんとかね」
そう言いビニール袋を掲げる#name4#に、黒子は僅かに目を輝かせた。
「さすがです、#name4#君」
「でも先輩、1年に頼んでおいて結局自分たちも来ちゃうんだよ?」
ほら、と#name4#が指をさした先には、屈強な男数人が固まっていた。
「す、すごいですね……」
試合さながらにスクラムを組む男たちに、黒子は冷や汗を流した。
「ははっ、アレ、もうパンとかどうでもよくなってると思うな」
そんなことを言いながら薄く笑う#name4#に、黒子も微笑みを向けた。
「――って、なんだ、テツヤもパン買えてたんだ」
「はい。なんとなく人込みに流されてたら先頭に着いたので、お金置いてもらってきました」
「テツヤこそ、さすがだな」
「#name4#君に褒めてもらえるなんて光栄です」
それから少し雑談をして、#name4#が先輩たちのスクラムに連行されていくのを見送った黒子は火神たちの元へ戻った。