C-2

【#name4#視点】

誠凛高校に入学してから早くも半年以上が過ぎていた。

相変わらず俺の女装はバレていない。いや、家のしきたりだから俺自身はバレても特に問題はないのだが、周りかそうもいかないだろうから隠す努力はしている。

しかし、自分で言うのもなんだが、"私"はかなり整った容姿をしているためか、この半年で何回かの告白を受けていた。

もちろん断っていたが、今回は――少しばかり事情が違った。

「突然呼び出したりしてすみません、#name3#さん」

目の前にいる同級生――黒子テツヤによって、放課後の図書室に俺は呼び出されていた。

彼が"私"に好意を持っているのは薄々気づいてはいた。

今まで男に好かれても何とも思わなかった――むしろ嫌悪に近い感情を抱くこともあった――というのに、黒子相手ではどうしたことか、優しくされると照れが出てしまうのだ。

「全然大丈夫だよ。それで、私に何か用事でもあったの?」

「はい。とても大事な用があります」

「…………」

黒子はいつも真面目だが、いつにもましてまっすぐなその視線にどう応えたら良いのかわからず、まったくわからないとでも言うように、首を傾げてごまかした。

「ボクは、#name3#さんのことが好きです」

男前にそう言い放った黒子は、俺が口を開くよりも早く言葉を続けた。

「本当はもう少し仲を深めてから言おうと思ってたんですけど……#name3#さんにはもう気づかれていたようなので」

「え……」

気付かれていたことに驚いてポカンと口を開けていると、黒子は少し困ったような微笑みを見せた。

「……返事を急かすつもりはありません。ボクが言いたかっただけですから」

突然言われても困りますよね、と勝手に話を進める黒子に、俺は少し腹が立った。いや、俺が返事しないのが悪いんだけど。

「あ……あの私、黒子君に言わなきゃいけないことが、あって……」

今日このまま別れたら明日から気まずくなる気がする。それは嫌だと思ったら、反射的に彼の腕を掴んでいた。

しかし、"言わなきゃいけないこと"となると必然的に性別のことになるが、それを話すということは、俺が彼の告白を少なからず受け入れようとしているということだ。

自分で自分がどうしようとしているのかわからなかった。

今まで他人に俺が男だということを話したことは一度もない。教師の中にはもちろん知っている人もいるが、それは義務であり自発的なことではなかった。

「黒子君は、さ……」

「はい」

「……同性愛についてどう思う?」

「え?」

これにはさすがの黒子も驚いたようだった。当たり前だ。

「あまり考えたことはなかったですけど……ボクは特にどうとも。人それぞれだと思います」

黒子なりにこの短時間で考えてくれたらしい。だがその目は俺に同性愛者なのかと聞いているようにも見えてくる。

「突然どうしたんですか?」

身長は5cmほどしか変わらないが、少し下から見上げてくる黒子。あれ、黒子ってよく見たらキレイな顔してるな。

男の顔なんて今まで気にも留めなかったのに。

「私が今から言うこと、驚かないで聞くのは無理だと思うけど……」

そこでようやく決心がついた。

ずっと女子として接していたが、性格まで偽っていたわけではない。まあ、多少の"脚色"はあったけど……。

ともかく、断って気まずくなるのも、女のフリをして"黒子の彼女"になるのも嫌だった。

「私は――……いや、俺は、男なんだ」

黒子の目をまっすぐに見て、俺は性別を明かした。

……なんだこれ、なんか恥ずかしい。街中で全裸にでもなっているかのような気分だ。

「あの……ちょっと、話について行けないんですが」

「えっ。あ、いや、うん、そうだよな、はは……」

とりあえず軽蔑されたりはしていないようで、少し安心した。

しかし、がんばって出していた高い声もやめて、完全に男の声だ。黒子もさすがに信じてくれるはず……多分。

「うちの家系がさ……代々男が短命なんだ。それで、しきたりっていうか……成人するまでは女として育てられる決まりがあって……」

「…………」

「その……ごめん」

なんだか申し訳なくなってしまい、謝った。

「どうして謝るんですか」

「え? まあ、仕方ないとはいえ、一応騙してたわけだし……」

「ボクは騙されたなんて思ってません。――キミの事情はわかりました。その話を聞いた上で、なんですが」

なんだろう。"やっぱりさっきのナシで"ってことだろうか。当然といえば当然だが。

「ボクは、#name3#さんのことが好きです」

「………………いやいやいや、ちょっと待て」

「確かに、#name3#さんのことは女性だと思ってました。けど、今の話を聞いてキミが男だとわかっても、気持ちは変わりませんでした」

キミだから好きになったんだと思います、とか、そんな男前にもほどがある上に恥ずかしすぎるセリフをさらっと言う黒子。

「あ、キミが男が嫌だったら諦めるしかないですけど……」

「……本当にいいのか? 嘘じゃないからな、俺が男だっていうの」

「はい。むしろその身長であることに納得がいきました」

どうやら、俺より背が低いのを気にしていたらしい。

*****

それから1週間。

正直何故受け入れてもらえたのかわからないまま、俺は黒子と恋人として過ごしていた。

学校ではもちろん女のように振る舞っているが、2人きりで周りに人がいないときは素でいるように黒子に言われたりして、なんかちょっとむずがゆくなったりもした。

そうしているうちに、ある噂が立ち始めた。

――"#name3##name2#は誠凛の男子と付き合っている"

……噂というか、事実だった。

誰かに問い詰められる前に黒子に相談したら、"本当のことを言えばいい"と言われ、俺は混乱していた。

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