ショタコン疑惑
【帝統視点】
昨日俺たちが寝た後で、幻太郎はぐちゃぐちゃのスクールバックを洗っていたようだった。
ふやけたのを乾かされた生徒手帳を見つけて、拾ったガキの名前が判明した。
「萬里小路杏くん、というようですね」
そう呟いた幻太郎は何やら考え込んでいる。
「こいつ、全然起きねえな……」
「まあ、寝かせておいてあげましょう。どこぞのサラリーマンのごとくクマがくっきりついてますし、きっと寝られていなかったんでしょう」
「寝られてねーって、家でもってことか?」
「そうなりますね。――所持品から名前や学校、住所はわかりましたけど、彼、おそらく中王区の関係者ですね」
「はあ? なんでわかるんだよ?」
「まず"萬里小路"という名前が気になります。それから住所は中王区に次ぐ一等地というところでしょうか、男性ですから外に出されたんでしょう。通っているのも有名なお坊ちゃま学校ですし」
「お前……探偵向いてんじゃね?」
「それはどうも」
幻太郎が嘘をつかないのはなんかヘンな感じだったが、ともあれこいつの素性がわかった。
「とりあえず、今日はこの後乱数が来ますから、詳しい話はそれからにしましょう」
「だな。んじゃ、メシ食おーぜ!」
「……はいはい。今用意しますから、おとなしく"待て"しててくださいね」
「俺は犬じゃねえ!」
*****
「げんたろ〜! お邪魔しま〜す!」
朝メシが終わったところで、乱数が来た。
「それでそれで、帝統が誘拐したのはどの子?」
「誘拐って、幻太郎お前なあ!」
「小生ちゃんと伝えましたも〜ん」
「へ〜まだ寝てるんだ。ちっちゃいね! 小学生くらい?」
「いやお前も変わんねえだろ。つか、こいついくつなんだっけ?」
「生徒手帳を見る限りでは高校生ですね」
「えっ、ちっちゃ〜い!」
未だ青白い顔色のまま布団で丸くなって寝ている……名前、"杏"っていったか。
俺たちが横で騒いでいたら、杏は少し動いてやっと起きた。
「おや、目が覚めましたか? おはようございます」
「おっはよ〜!」
「っ…………」
俺たちを見て飛び起きた杏は、昨日と同じく黙りこくっている。
「状況が呑み込めていないのかもしれませんね。――とりあえず、朝食を用意してありますから、食べながら話しませんか?」
「そんなに怖がらなくても平気だよ? ボクたちは優しいオニーさんだからね!」
「そうだぜ、誰もお前にひでえことしねーからよ」
警戒を解こうと呼びかけると、少しは信用してくれたのか、布団を握っていた手の力が抜けた。
その隙に杏の両手を取った乱数が杏を立たせる。
「行こ!」
乱数と乱数にされるがままの杏、サイズ感が同じ2人は連れ立って居間へ歩いて行った。
*****
杏は相変わらず無言のまま、幻太郎の作った朝飯をゆっくり食べている。
「おいしいですか?」
「っ、は、い……」
「ふふ、それは重畳」
幻太郎は何故かこいつを気に入っているようだった。
「ねえねえダイス、幻太郎ってもしかしてショタコンだったの?」
「は? 知んねーけど……そうなんじゃね?」
「え〜もしかしてボクも狙われちゃう?」
「2人とも、聞こえてますよ」
乱数とこそこそ喋ってたら睨まれた。