バカヅキの女
【帝統視点】
今日も有り金をパチでスッちまった。
いや、まだ多少は残っているが、今日は勝てる気がしねぇ。だが戦わなきゃ負けるだけだ、ここで下りる選択肢はねえ!
台を変えようかと思ってたら、隣の台に若いきれーな女が座った。パチ屋にはあんまいねえから珍しい。
けどその台はさっき俺が当たらなそうだと思って避けた台だ。まあいけそうだと思った台でもスッたけどな。
こいつもスッちまうんだろうなと思いつつ、残りの金を自分の台に突っ込んだ。
*****
「……!?」
数十分もしないうちに、隣の台ではパンパンのドル箱がタワーのごとく積まれていた。
当たり前みたいに大当たりを打ち続ける女を見ると、その表情は意外にもつまらなさそうだ。
それからしばらく、なんとなくその女の打ち方を見ていた。
「……打ち方真似ても勝てないと思うよ?」
「あ? あーいや……」
パチ屋の騒音の中でも不思議と通る声で、そう言われた。
別に真似ようと思って見てたわけじゃないが、じゃあ何なんだと言われても答えられない。
「? まあいいや、そろそろ帰ろっかなぁ。じゃあね」
そう言った女はさっさと換金して帰って行った。……変わった奴だ。
*****
幻太郎に借りた金を倍にして返すため、今日は競馬だ。
新聞見たしそれなりに予想して賭けたが、結果は微妙だった。大負けじゃねぇだけマシだけどな。
別の賭場に行こうとベンチから立ったところで、"そいつ"の存在に気付いた。
何列か後ろに、あのパチ屋でドル箱を積んでいた女がいた。
驚いてじっと見ていたせいか、そいつも俺に気付いた。向こうも驚いた顔で、ちょっと考えるようにしたあと、微笑みながら手を振られた。
振り返すのも無視すんのもなんかアレだったから、とりあえず片手を上げて挨拶しておく。
帰り際、そいつの持ってた馬券が見えたが、また大当たりしていた。マジで何モンなんだ、あいつ……。
*****
別の賭場に向かう途中、突然後ろから誰かに肩を叩かれた。
「よっ」
そんな軽い調子で挨拶してきたのは、ついさっき競馬場で見たばかりの女だった。予想外のことにポカンとして立ち止まる。
「おう……? つーか、アンタ誰だよ?」
「西御門。君は?」
「にし、みかど? 俺は有栖川帝統だ」
"にしみかど"と名乗ったそいつに俺も名前を教える。多分"みかど"が名前なんだろう。
ミカドは特に表情を変えることもなく淡々と話し始めた。
「ありすがわだいす? ……君、もしかしてギャンブラー?」
「おう! アンタもか?」
「……そうだよ。それで、アリスちゃんは今日はもう帰り? それとも別んとこ行くの?」
「今日は――ってアリスちゃんって何だよ!?」
「あれ、嫌だった? 有栖川だしアリスちゃん。かわいいぞ?」
「かわいくなくていーんだよ! とにかくアリスちゃんはやめろ」
ざーんねん、と全く残念そうじゃない感じで言われた。いや、"アリスちゃん"はねーだろ。
「予定ないならついてきてよ。雀荘行こ?」
「別にいーけど……」
名前以外何も知らない、妙な距離の詰め方をする奴。今までに会ったことないタイプだ。
ま、悪い奴じゃなさそうだし、ギャンブル好きらしいし、ついて行ってみるか!