どっちが幻太郎くんでしょうかゲーム
【帝統視点】
昨日の大負けで素寒貧になった俺は、幻太郎の家に金を借りに来た。
インターホンを押そうとしたら同時に玄関が開いて、そこから幻太郎が顔を覗かせた。ナイスタイミングだぜ!
「幻太郎〜! お願いします! お金貸してくださ〜〜〜〜い!」
「おや……ええと……帝統?」
「?」
いつもなら"またですか"とか小言を言われるところだが、今日はそれがなかった。
玄関が開くと同時に土下座していた俺は顔を上げ、幻太郎の様子を伺う。
「幻太郎?」
「はい?」
「……何か今日おかしくねぇか?」
「いやですねぇ。麻呂は今日も元気元気! でおじゃ〜」
あれ、いつもの幻太郎だ。
「それよりどうぞ上がっておくんなまし。お茶でも淹れますよ」
え?
やっぱり様子のおかしい幻太郎はそう言ってさっさと家の中に入っていった。俺もそれに着いて家に上がる。
「邪魔すんぜ〜」
居間に入るとそこには当然幻太郎がいて、俺を見て驚いた顔をしていた。
「帝統……貴方ついに不法侵入ですか?」
「は? お前が上がってけっつったんだろ?」
「何を言って――、ああ、そういうことですか」
「?」
どういうことだ? おいおい、今日は本気でおかしいぜ幻太郎。
「で、今日は何用ですか?」
「それさっきも言ったぜ。けど頼む、お金貸してください!」
「……わかりました。ただし条件があります」
「条件?」
「実は小生、分身の術が使えるんです。本物の小生を見抜ければ、お金を貸すことを検討してあげますよ。どうしますか?」
「乗った!!」
金がなくても、金を借りるために賭けができるなんて最高じゃねえか!
「分身にはツッコまないんですね。まあいいでしょう、では、少しそこで待っていてください」
そう言った幻太郎は別室へ出て行った。
*****
【幻太郎視点】
「全く、何をしているんですか」
帝統のいる居間を出て自室に戻ると、そこには"やらかした"本人が能天気に小生の服を漁っていた。
こいつは突然ふらりと家に来ては小生の服を勝手に着て遊んでいる。小生と同じような見た目をしているから似合わないわけはないのだが、趣味でしているというコスプレの一環のつもりなんだろうか。
「何が? ――あ、帝統くんのこと?」
「他にも心当たりが?」
「ないけど。だって幻太郎だと思われてたからさ、驚かせちゃうかと思って」
「心にもない気遣いは無用です。今着てる服でいいですから、ほら行きますよ」
「え、アレやるの?」
「ええ。"どっちが幻太郎くんでしょうかゲーム"、昔はよくやっていたでしょう」
「バレないかな、この前ちょっと髪切っちゃったんだけど」
「大丈夫です、どうせ最後にネタばらししますから」
双子の兄である想太郎とは、一卵性のため鏡映しのごとくそっくりな顔立ちをしている。
さすが生まれた時から一緒にいるせいか、想太郎とは以心伝心というか、とにかく"わかる"ということが多い。
とはいえ性格までそっくりというわけではなく、想太郎の方が社交的――素直で人好きのする性格だ。
そのおかげで学生時代は小生が"暗い方の夢野"、想太郎が"明るい方の夢野"とかなんとか言われ――いや、今はそんなことはどうでもいいんですよ、ええ。
*****
【帝統視点】
「お待たせしました〜」
幻太郎が2人になって帰ってきた。
「…………」
「おや、驚きすぎて声も出ませんか」
「ま、無理もありませんね。――さ、どちらが本物の小生か」
「当ててみてください、帝統」
2人の幻太郎が交互に喋る。
いつも外で着ているやつと、家ん中でよく見るやつ、服装は違ったがどっからどうみても両方とも幻太郎だった。
「そんなに悩まれるとは、妾の顔を忘れてしまったのですか?」
「意外と薄情なんですねぇ、小生も同じポッセだというのに」
「だぁ〜〜〜わかんねぇ!! こうなったら、賽を振って決めるぜ!!」
偶数だったら右の幻太郎が本物、奇数だったら左の幻太郎が本物だ!
ポケットから出したサイコロを床に投げる。
「……5、っつーことは、お前が本物の幻太郎だ!!」
左の幻太郎を指さして言った。
「残念、不正解です」
幻太郎はにっこり笑って答えた。うそだろぉ……!?
「ところで帝統、小生が2人いることについては何も思いませんか?」
「……はっ、そうだ! 何で2人いんだよ?」
最初に言ってた分身ってのが嘘だとしても、明らかに幻太郎が2人いる。