アリスくんA
【夢主視点】
アリスくんへのネタバラしは色々とイレギュラーだったけど、まあそんな日もあるかーぐらいに思いつつ服を着直した。
「ミカドちゃん、この後食事でもどう?」
「え、僕女の子じゃないですよ?」
「ああ、わかってるよ。それでも、なんだけど」
そう誘ってきたオジサンの連れは表情から下心が丸見えだった。まあアリスくんほどじゃないにしろこっちもイケメンなので悪い気はしない。
普段なら誘いに乗って一発シケこむところだが、さっきから横でそわそわしながらこちらの様子をうかがうアリスくんが気になる。
「……行っちまうのかよ」
言い方は不機嫌そうだったけど、アリスくんの周りになんか捨て猫みたいなオーラが見えた。にゃーん。ほっとけない感じだ。
「行ってほしくないの?」
「あぁ? つか、俺を誘ったのはミカドだろ!」
「おお、そうだった。――すみません、ご飯はまた今度お願いします」
オジサンの連れにそう返事をして、オジサンには挨拶してからアリスくんの手を引いて雀荘を出た。
「なあ、アイツとメシ行かなくてよかったのかよ?」
「うん。それよりアリスくんお腹空いてない?」
「おごってくれんのか!?」
「君、控えめなのか図々しいのかよくわかんないね。奢りでいいよ、何食べたい?」
「肉」
「ざっくりしてんなー。焼肉でいい?」
「焼肉!」
奢り焼肉にはしゃぐ姿が最高に輝いていた。
*****
驚くほどの量を胃袋に収めたアリスくんは上機嫌だった。
アリスくんはお金がなさすぎて2日ぶりの食事だったらしい。昨日も公園のベンチで寝てたって言うし、その日暮らしなんだろうなあ。
「あんなうめー肉初めて食ったぜ! ありがとな!」
ちゃんとお礼を言える良い子じゃないか。純粋にギャンブルが好きなだけで、悪人じゃないことはなんとなくわかってたけど。
「な、なあミカド……」
「ん? まだ食べ足りない?」
「いや、メシじゃなくて。――お願いします! 今日だけでいいから、泊めてくださーい!」
律儀に頭を下げたアリスくんは両手を合わせて"お願いします"のポーズを取った。
「お、おう……そんな必死に頼まなくても」
「いいのか!?」
「いいよ。っていうか、ホテルとか行きたいのかと思ってたよ」
「ホ……!?」
「あれ、そういうつもりじゃなかった?」
下心丸出しの男の誘いを邪魔してまで僕を引き留めたわけだし、アリスくんも男はイケる人なんだと思っていた。というか僕はそのつもりだった。
しかしなんだ、その反応は。生娘か? アリスくんは驚いた表情で顔を赤くさせていた。
遊び慣れてる人とばかり関わっていたからか、こんな初心な反応をされるとこっちまで変な気分になる。
「ごめん、いいよ、家行こっか」
「おう……」
急にしおらしくなるな! 肉のときみたいにはしゃいでくれ! そう思わずにはいられなかった。
「そういや、ミカドどこ住んでんだ? 俺電車賃ねえよ?」
「シブヤだよ。ここから歩いて15分くらい。アリスくんは――じゃなかった。公園だっけ」
「いや住んではいねえよ。寝てるだけだ」
「それ住んでるんじゃ……。雨の日とかはどうしてたの?」
「あー、ダチんとこ行ったりだな。金があれば満喫とか」
「そっか、それはよかったよ……」
暴風雨の中、公園のベンチの下やら公衆便所やらで一夜を過ごしてたら不憫すぎるからな。