脱アリスくん@
【帝統視点】
髪を乾かし終えたミカドは俺を寝室に案内した。
「俺ソファでいいぜ?」
「えー、つれないな。僕と一緒じゃ嫌?」
「いっ……」
嫌じゃねえ、けど、それを言ったらなんか戻って来られないトコに行っちまいそうだった。
「ベッド広いし、2人くらい余裕だよ?」
「ぐっ……!」
「あは、まあ無理にとは言わないよ。でもアリスくんはお客さんだから、ベッド使ってね」
俺の葛藤なんて知らないミカドは寝室から出て行こうとする。
笑って言う割になんか若干悲しそうな顔をするもんだから、俺はとっさに腕を掴んで引き留めた。
「……ほんとに無理しなくていいよ? アリスくん、別に男と寝るシュミないでしょ?」
「寝るって、やっぱお前そういう――」
やっぱり、雀荘でオッサンに誘われてたのはそういう意味だったようだ。
ミカドが知らない野郎と遊んでるってのは、正直面白くねえと思った。
だいたい、こんな大人しそうな見た目しといて淫乱とか、なんかズルいだろ。
つーか、ミカドが一緒に寝るのに俺を誘ったってことは、俺と"そういうこと"がシたいってことだよな……!?
遊んでるのは面白くねえけど、同時にちょっと嬉しくなった。
「アリスくん? ちょっと、固まらないでよー」
「あ、わりぃ……じゃねえ!」
なんて言ったらいいかわかんねえから、とりあえずミカドの肩を押して、ベッドに座らせた。いや、座らせようと思ったら勢いつけ過ぎて押し倒しちまった。
や、やべえ、俺経験ないんだよな。まずはキスか? キスで合ってるよな?
混乱しつつミカドの顔に自分の顔を近づけると、怪訝そうな表情で止められた。
何でだ? 何か間違ってたか?
もはやミカドが男だとかそんなことは頭になくて、こいつとエロいことできんならヤりてえとか、それしかなかった。
「もしかしてアリスくん酔ってる? そんなに飲んでなかったけど、お風呂入ってお酒回っちゃった?」
「は? いや、俺ザルだけど」
「うん、僕もそう。ていうか、アリスくん嫌なんじゃなかったの?」
「あー、いや、なんか、ミカドならいけそうっつーか……」
困ってるようで、でも若干期待してるような目だった。なんだよ、やっぱお前もヤりてーんじゃんか。
俺に押し倒されてそんな顔をしているミカドを素直に抱きたいと思った。こういうのは経験より本能だろ!
「だっ、抱きてーんだけど。ダメか? ミカド……」
「えっ。……やっぱり、押しが強いんだか弱いんだか……」
押しが強えとか弱えとか、そういう駆け引きみたいなのは俺には向いてねえ。ギャンブルは別だけど!
*****
【夢主視点】
抱きてーんだけど、ダメか? なんて初めて言われた。
無理矢理ヤる趣味はないから、アリスくんが嫌なら残念だけど今回はやめておこうと思ってたら何故かこんなことに。
いや、アリスくんがやる気なら断る理由もないか……?
「ダメなわけないよ。でも、アリスくん男とシたことないんだよね? 大丈夫?」
「男とっつーか……誰ともヤったことねえんだけど」
嘘だろ。反応が初心だなとは思ってたけど、最近ご無沙汰だったとか、男は初めてだからだとばかり。
「意外だな。アリスくんかっこいいから、女の子とは経験済みかと思ってたよ」
「…………」
黙っちゃったけど、表情を見る限り照れているようだ。かわいいな……。
「――あっ! そういやお前、その"アリスくん"ってのやめろよ」
思い出したようにアリスくんはそう言った。まあ確かにこんなときまであだ名で呼んでたらムードもないってもんか。
「わかったよ、帝統くん」
「"くん"とかいらねえ」
「だいす〜」
そう呼びながら、僕に覆いかぶさったままの帝統の首に両腕を回す。キスできそうなくらいに顔を近づけた。
帝統はなんか固まったまま動かないけど、顔赤いし多分これも照れてるだけだから大丈夫だろう。
「ね、僕のことも名前で呼んでよ。ミカドって、名前じゃないんだよね」
「へ?」
「ミカドじゃなくて"西御門"が苗字なんだ。下の名前は亜璃澄」
「お前……人のことさんざんアリスアリス言っといて、自分もアリスかよ!?」
正論だった。でも女の子っぽい名前だから、嫌いじゃないけどちょっと恥ずかしいんだよな。昔はそれでからかわれてたし。
「あは、許してよー。賭場で知り会った人に名前教えるの、帝統が初めてなんだ。あ、でも、また賭場で会っても名前は呼ばないでね」
「何でだよ?」
「女装してるのも名乗らないのも、賭場で仕事関係の人にバレないようにだからさ。アリスなんて名前の男、なかなかいないしね」
「ふーん……別にいーけど」
なんかちょっと嬉しそうだ。かわいい、やばいな、久々に本気になりそう。
「あ、僕と帝統が結婚したら"ありすがわありす"になっちゃうね」
「は、結婚!?」
「シブヤは同性婚できるでしょ?」
「え、そーなのか?」
うん、まあそういう制度とかに興味なさそうだもんな帝統。