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・あばら家はすでに電気水道ガスが止まっており住めない状態。
・今はあばら家にこっそり住んでいるが、見つかって追い出されるのも時間の問題。という設定
・それを知った明智が気まぐれ的に同居を持ち掛ける。というトンデモ設定。シリアスでないただのエロ
・祐介の世話で長年培われた包容力に明智が絆される話(にしたかった)


【明智視点】

数日前、斑目一流斎が急遽会見を開き、号泣しながら己の罪を洗いざらい告白した。

その後、彼とその弟子たちの住んでいたあばら家は、廃墟とはならずとももう誰も住んでいないという。

弟子である喜多川祐介は洸星高校の学生寮に移り住んだようだが、もう一人の弟子である明坂亜依に関してはまだ調べがついていない。

まあ、別にそこまで調べる必要もないのだが、彼女も怪盗団のメンバーということで一応、だ。


・放課後 人気のなくなった教室での話

「明坂さん、家事は出来る?」

「まあ、基本的なことなら出来るけど」

「なら、明坂さんさえよければだけど、僕の家に来るかい?」

「は?」

「実は僕、1人暮らしなんだけど、そこそこ広い部屋を与えられていてね。正直持て余してるんだ」

「…………」

明坂さんは訝し気な表情でこちらを窺っているが、僕は構わず続けた。

「最近は僕も探偵の仕事で家を空けることが多いから、お互いに干渉することも少ないだろうし。どうかな?」

彼女がこんな話に飛びつくような人物でないことはわかっている。現に今も熟考に熟考を重ねているのだろう。

彼女にとってはこの上なく都合が良いが、一般的に考えれば、いや、考える必要もないほどありえない話だ。

「見返りは、家事だけ?」

「そう思ってもらって構わないよ。ああ、それと、時々話し相手にでもなってくれたら助かるかな」

「……そう……」

いつもあまり変化のない彼女の表情が変わった。と、思ったら、こちらをまっすぐ見ていて。

「今の話、もし冗談でないなら、お願いしたいのだけれど」

「え……本当に?」

「っ、なに、やっぱり冗談だったの?」

僕が思わず驚いたのを見て、彼女は少し恥ずかしそうな表情を見せながら目線を外した。

「いや、僕はそんなタチの悪い冗談は言わないよ。でも君がこんな話に乗るなんて意外だったから、少し驚いただけさ」

「……私には他に頼る当てもないから、これでも焦ってるの。――それで、いつから行っていいの?」

「ああ、明坂さんの準備が整い次第、いつでもどうぞ。もちろん今日でも」

「本当に? なら、遠慮なく。これから斑目の家に荷物を取りに行くわ」

「ああ、僕も一緒に行くよ。後でまた合流するのも面倒だしね」

「なら、夕方雨降るらしいから、早く行きましょう」

決断してからの彼女の行動は早かった。

電車で渋谷に向かい、そこから少し歩いたところにあるあばら家は、確かにもう人が住むような場所ではない雰囲気が漂っている。

立てつけの悪い玄関扉を慣れたように開けて中に入って行った佐野さんは、数分と経たずに戻ってきた。

「荷物、それだけかい?」

彼女が持っていたのは旅行用にしても小さめのボストンバッグ1つだけだった。

「ええ。元々、あまり私物は持ってない方だから。着替えくらいしか入ってないわ」

「そっか。」


導入が長いので削りたい
途中で雨が降ってきて2人ともびしょぬれになり帰宅後なんやかんやで風呂に。ここからエロ


*****


・年相応な明智

【明智視点】

どうしてこうなってしまったんだっけ。

ふと我に返って、そんなことを思ってしまった。

今自分がいるのは自宅のシャワールームで、本来1人で入るべきこの空間には人間が2人いた。

「どうしたの、明智くん?」

低い風呂場椅子に座った僕の真後ろで膝立ちをしたまま、正面の鏡ごしに見つめているのは明坂亜依――クラスメイトの女子だ。

「突然ぼーっとして、のぼせちゃった?」

のぼせてなどいないが。

のんきなものだ、状況がわかっているのだろうか。

もう一度言うがここはシャワールームで、僕も彼女も当然ながら衣服など身に付けていない。

「ああ、ごめん。少し考えるべき事があってね、というより……」

反応を返さなかったことについて取り繕ってはみたが、彼女は特に気にしてもいなさそうだった。

「君、恥ずかしくないのかい?」

「あら、今更そんなこと聞くの?」

マイペースなことに、彼女は僕の背中をせっせとボディシャンプーをつけたタオルで洗っている。

「だって、雨に濡れて寒かったじゃない? どっちかが出るのを待ってたら、待ってる方は確実に風邪引くわよ」

「だからって……」

そうだ、きっかけは僕が宿無しの彼女に同居を持ち掛けたこと。

帰りがけにゲリラ豪雨に遭い、やむを得ず濡れネズミになって僕の家まで帰ってきて。

それから僕は彼女に風呂を勧めたが、家主を差し置いて……などという問答の末、混浴という結果になってしまったわけだが。

「かゆいところはない?」

「ないよ。って、さすがに前は自分でやるから、君は湯舟にでも浸かっていなよ!」

「つれないのね」

「もう少し危機感を持ってくれ……」

「そうね、私を前にしてよく我慢してると思うわ」

「それ、自分で言うのかい?」

思ったより自己評価が高いようだ。

まあ、その、彼女の言う通りではあるけれど、素直にそれを認めてなどやるものか。

同年代とは思えない豊満な体つきで、顔立ちだって一般的に見て整っていると言えるだろう、あくまで一般的に見て。

僕には男女交際の経験はないし、今後その予定もない。だが"これ"が普通じゃない事くらいはわかる。

僕の実にくだらない葛藤など知りもしない彼女は、身体についた泡を流して大人しく湯舟に浸かっていた。

「別にうぬぼれているわけじゃないのよ。実際、今まで会った男性の9割は私の胸ばかり見ていたもの」

「へえ、それで、僕もその9割に入っているんだ?」

「いえ、明智くんは1割の方ね。――私のお尻ばかり見てる人」

「はぁ!? 見てねえだろ! ……あ」

身に覚えのないことを言われて、思わず咄嗟に言葉が出てしまった。

それに気づいて口を閉ざし、彼女を伺えば、特に変わった様子もなく。

「ごめんなさい、今のは冗談。明智くんはびっくりするくらい、他人になんて興味なさそうだったわ。……って、ああ、そうだ! 髪も洗ってあげようと思ってたの、忘れてたわ」

「は?」

彼女は突然立ち上がり、身体を隠すこともなく湯舟から上がって、再び僕の後ろに回った。

「えっと、シャンプーは……これね」

「ちょっ……」

僕の肩越しに手を伸ばすものだから、当然ながら背中には彼女の胸が押し付けられるわけで。

本当にこれが人体の一部なのかと思うほど柔らかい物体を背中に感じる。

「っ、君、わざとやってる?」

「どうかしら。自分で大きさをどうこうできるものじゃないし、ぶつかることもあるわ」

「なら、今はわざとだろう?」

そう、そんな屁理屈のような言葉を並べている間も、彼女は上半身を僕の背中に密着させていた。

「ええ、だって嫌がらないんだもの。明智くん、誰でもいいってタイプとは思えないし、反応を見る限り私は許容範囲なんじゃないかしら?」

彼女は僕の返答を待たずに言葉を続けた。

「私も別に誰でもいいとは思ってないわ。まあ、斑目のところにいた頃から、絵のモデルとして人前で脱ぐことには慣れていたけど」

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