こわいゆめをみました(斜堂)
「怖い夢を見ました」
急に押し掛けてきたのは、同じ教師であるりんさん。
気配も消さずに堂々と部屋に入って来たかと思えば思い切り私の布団を剥がし、揺さぶった。
「だから何だというのです」
「だから、怖い夢に怯え震える私を優しく撫でて慰めてください」
「今すぐ帰ってください」
忍者らしからぬ理由で来て、女性らしからぬ要求をされる。
そのくせ震える仕草を見せもしない。
うんざりして布団をかぶると、りんさんまで潜り込んできた。
「何を考えているんですか! 貴女は自分が女性である自覚あるんですか」
「ありますけど、最近は斜堂先生が全くなびいてくれないから少し自信を無くしています」
「ばかなこと言ってないで、早く自室に戻ってください」
「斜堂先生が私を抱きしめてくれたら戻りますから、一度だけでいいですから。ね。お願いします」
いつもの強引でふざけた態度ではなく、もぞもぞとすり寄って、可愛い声でねだられてしまい、結局その魅力には叶わなくて、背中に腕を回してそっと抱きしめた。
最近はずっとこんな感じで、りんさんのわがままに振り回されている。
こちらがどれだけ我慢しているのか知りもしないで、惚れた晴れたと私の後を着いてきて、触れて構ってと求める。
それをところ構わずやってのけるのがやっかいなのだが、そんなりんさんよりもやっかいなのは、相手がくの一だというのにまんまと本気になってしまった私の気持ちだった。
「ほら、抱きしめてあげたのだからもう満足でしょう。早く戻って下さい」
そんな私の言葉にりんさんはくすくすと笑った。
「斜堂先生ったら、そんなこと言うのに腕は離してくれないんですね」
りんさんの言うとおり、一度抱きしめたりんさんの体を離すことができなくなっていた。
未だに笑い続けるりんさんを黙らせるように髪に指を通せば、ぴたりと静かになった。
「斜堂先生が私のこと想ってくれるなんて幸せ」
「何を言うんです」
「怖い夢を見たのは本当なんですよ。斜堂先生に拒否されて突き放される夢」
「そんなものの何が」
「私にとっては何よりも怖いんです」
いつものおちゃらけた雰囲気なんて全くない儚げな様子が、私が守らなくてはいけないと、思わせた。
「私を本気にしたのは貴女です。後で嘘だったと言ったって、もう聞きませんからね」
腕の中で見上げる瞼にそっと唇を寄せると、りんさんは幸せを顔いっぱいに表してくれた。
喜びを隠さないりんさんに、きっと自分のほうが嬉しく思っていると、伝えればいつものへらりとした顔で返された。
そこでふと気づく、いつものへらへらとした顔は、真剣に言葉をぶつけるのが恥ずかしい照れ隠しの表情だったんだと。
それを知ってこみ上げた愛しさに付き動かされて、りんさんを強く抱きしめた。
手放す気はない。
腕に力を込めたまま、りんさんの体温を確かめるように眠りについた。
END
20140413
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