1日

 伯寧様は一日をほとんど寝て過ごすようになってしまった。薬と食事の時間には起こすけど、自分から起きている時間はほぼない。それでも少しの間だけ目を開けている時があるから、その時にたくさんお話をしている。私が一方的に喋るだけの、お話と言える程のものでもないけど。言葉を発するのにも体力を使うせいか、自分からほとんど話すことはないけれど、私が話すことを一生懸命聞いてくれる。返事はなくても、伯寧様の目が、表情が楽しいと応えてくれるから、私も楽しくてついつい話し込んでしまい、息子達に咎められることもある。今日の伯寧様は調子が良いのか、自ら体を起こそうとしていたから、支えて上半身だけ起こし、寝台の背に寄りかからせた。私も体を支えるように寄り添い、伯寧様の肩にもたれる。

「さて、今日は何の思い出話をしましょうかしらね」

 見上げて問いかけると、伯寧様はにこ、とゆっくり微笑んだ。私の大好きな表情だ。私もつられて口元がゆるむ。手を絡めたら、ぎゅっと力強く握り返された。


20210301

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