満寵×チャイナブルー×自分自身を宝物だと思える自信家


 「昼までには戻る」といって家を出ていった彼女が昼になっても戻って来なかったから、探しに出ることにした。彼女が行きそうな場所は大体わかる。歩いて15分くらいの、海の見える場所。彼女はそこが好きで、何かある度によく一人で佇んでいた。そこへ向かうと、思った通りに彼女の後ろ姿が見えた。砂浜に繋がる階段の端に座っている。少し間を空けて隣に腰を下ろすと、無表情でじっと海を見ていた彼女の視線がこちらへ向き、すぐに驚きの顔に変わった。

「あれ、どうして?」
「昼になったから迎えに来たんだよ」
「そんなに時間経ってた?」
「ああ」

 彼女は自分の腕時計で時間を確認すると、「本当だ……」と小声で呟いた。家を出てから2時間は経っているだろう。そんな長時間海を眺めていることはほとんどなかったから、余程思い詰めている何かがあるのかもしれない。心配ではあるけど、彼女は自分の気持ちをきちんと整理した後に何があったかしっかりと話してくれるから、今回も彼女から話してくれるの待つことにした。

「伯寧、私仕事辞める」
「これはまた急だね」
「辞めるのは今決めた」

 そう言う彼女の表情は晴れやかで、家を出た時とは全然違う目をしていた。彼女はそのまま自分の気持ちを口にした。

「人が変わってからずっと職場の雰囲気が悪いって話したでしょ」
「うん」
「一人のせいでそうなってるからずっと上に言い続けてたんだけど、状況は全然変わらなくて」
「そうだったんだね」
「一人のせいで環境は最悪。上もやる気なし。私このままここで続けていけるのかなって」
「うん」
「でね、気付いたの。じゃあ辞めればいいじゃんって」
「無理に続ける意味はないからね」
「そう。それに私仕事できるからさ、すぐに良い所見つけられると思うし」

 自信満々に言う様子に自然と笑みがこぼれた。仕事の様子はわからないけど、彼女はとてもしっかりしているから、職場が変わったとしてもやっていけるだろう。それを自身で自覚しているのは彼女の良い所だ。

「転職活動前後は色々と迷惑かけるかもしれないけど、よろしくね」
「ああ、大丈夫だよ。心置きなく探しておいで」

 彼女は立ち上がると、思いっきり伸びをした。ぽきぽきと関節の鳴る音が聞こえてくる。

「決めたらすっきりした!それでお腹空いた!」
「じゃあ昼ご飯食べに行こうか」
「うん。あと、海見てたら前に飲んだ青いカクテル飲みたくなっちゃった」
「チャイナブルーだったよね。そしたらあのダイニングバーに行ってみようか」
「あそこ夜にしか行ったことないけど、お昼から飲めるかな?」
「ランチ営業はしているから大丈夫じゃないかな」
「よかった。そしたら早く行こう!」

 先程までの悩みなどなかったかのような笑顔を見せる彼女につられてまた頬が緩む。私も立ち上がり、お腹を空かせて先を急ぐ彼女の後を追った。



20210515

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