満寵


 満寵様に声をかけて頂き、久しぶりに街中の市場に出向いた。普段屋敷に籠もっている私は久々の外の景色と空気に目を輝かせ、満寵様の前だというのに随分とはしゃいでしまった。あれも見たいこれも見たいと片っ端からお店に寄ってかなりの時間を使ってしまったけど、満寵様は文句を言うこともなく笑って付き合ってくれた。そんな時間はあっという間に過ぎていくもので、気付けば日は傾き、風が冷たくなってきた。

「帰りましょうか」
「そうだね」

 まだ楽しみたいという気持ちをぐっと抑えた。また行きたくなったら私から声をかけて連れて行ってもらえばいい。屋敷に向かう満寵様の半歩後ろを歩いていたら、満寵様が振り返り、私の手を取った。驚いて顔を上げたら、優しく指を絡まれた。満寵様の手は大きくて私の手はすっぽりと収まってしまう。とても温かくて心地よかった。そっと握り返したら、満寵様と目が合い、微笑んでくれた。

20201108

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