郭嘉
いつも通りの身の回りの仕事を終え、部屋を出ようとした時、郭嘉様に名前を呼ばれた。何か申し付けられるのかと思い、椅子の側に寄って膝を折ろうとしたら、手を取られた。無言で急に触れてきたから何がしたいのか問おうとしたら、微笑まれた。顔の角度、光の当たり、目配せ、全てにおいて完璧だった。こうして片っ端から女を落としてきたのかと悟る。大抵の女ならこれだけで虜になってしまうだろう。私が無言で見ているのを肯定と捉えたのか、親指、人差し指と順番に撫でるように絡み取られる。その冷たい手に完全に捕らえられる前に、ぱっと手を離した。この流れで拒絶されるとは思わなかったのだろう。とても驚いた顔をしている。郭嘉様でもそのような顔をするのかと思い、自然と笑みがこぼれた。
「大勢の中の一人になりたくありませんので、他の方を当たって下さい」
失礼します、と腰を下げて部屋を出た。普通に考えたらとても失礼な態度を取ったように思えるけど、郭嘉様に対してならあまり失礼と思わなかった。むしろ今の私の言葉をどう捉えてくれるかとても楽しみだ。郭嘉様に触れられた手で口元の緩みを隠した。
20201108