軽いR15。
「なー。」
ベッドの上に横たわる簑虫に、男は声を掛ける。もう何度となく繰り返されたやり取りだ。
「なー、機嫌直せって、マスター。」
ベッドの端に胡座をかき、膝に頬杖をついて尚も男は呼び掛ける。マスターと呼ばれた簑虫が答える事はないが、寝ている訳ではないことは分かっている。
「俺が悪かったって。な?」
なあ、と、男はもう一度繰り返した。朝立の名残あるソレを隠そうともせず、男はまた一つ「なあ」と呼び掛ける。何の悪びれもないその態度に、簑虫を貫いていたリツカは内心で悪態をついた。そもそもこの男は、夜分のうちからこの部屋に居たという。
朝を知らせるようにぼんやりと明るくなりだす部屋に、いつものようにゆったりと意識が覚醒する。昨夜まではその視界は白で始まったが、今朝は違った。肌色に、墨の花が視界を埋める。ギクリと膠着する身体に、自分のものではない温もりが触れる。そっと顔を上げれば、端整な寝顔がすぐ近くにあった。
「わあ!」
驚きに短く悲鳴をあげ、リツカは掛け布団を手繰り寄せ男を蹴落とした。小柄な男は未だ夢の淵にあった事もあり、簡単にころころと床に転げる。
「いててて、どうしたんだマスター?」
「なっ、ななななっ、なん……」
落ちた衝撃で目覚めた男は何事かと立ち上がり、ベッドの上で縮こまるリツカの姿を視界に入れた。その姿は何一つ隠す事なく、その中央に朝立で持ち上がった竿がある。それは男の性だ、仕方がない。
「きゃー!」
「うお!?ど、どうしたんだマスター!」
端整な顔立ちは普段から女性的でもある彼の、男としての象徴をばっちり視界に納めてしまったリツカが簑虫になったのは、こういった経緯からである。そして屈んだ際に、自分もまた似たような格好である事に気付いた。
昨夜は何もなかったはずだ。何かあっても困るのだが。だから、覚えが無いのだ。着ていたはずの寝間着は消え、下着一枚で寝ていた事に。
「なあ。」
「なによ。」
せめて何故こうなったかくらいは聞こうと、リツカは漸く男の声に答えた。
「何で怒ってるんだ?寝具ならちゃんとそこにあるって!」
そういう問題ではない。破かれてたりしてたらそれはそれで怒りたくもなるが、そうではない。何故私が脱いでいる結果になっているのかが知りたいのだ。
「べつに、何もしてねえって。一緒に寝ちまっただけだって!」
「そもそもなんでアンタが私の部屋に居るのよ。」
ピシャリと言い放った疑問に、男は来てはいけないのか、と素直な疑問を返した。夜中に女の部屋に来るとか、サイテーと言いかけて止める。ここで返せば相手は調子に乗るだけだろう。
「……何もなかったから怒ってるのか?」
暫しの間を挟み、男はそう言葉にした。それは、やけに自信に溢れた言葉であった。
「は?」
つい、間抜けな声を返してしまう。
「なるほど、マスターは寂しかっただけか!」
誰かこいつを閉め出してくれ。頭沸いてんじゃない?
「ちょ、ちょっと何すんの!」
「何……って、べつに今日は特に大した用も無いんだし、今からでも良いんじゃないのか?」
「だから、何が……?」
ああ、聞き返してしまった。布団は力任せに剥がれ、被さってくる男に視線を向ければにんまりと笑っている。それはもう、楽しそうに。
「じゃ、イタタダキマス!」
「ちょっと、朝から盛るなばかー!」
妄犬注意
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彼は普通に睡眠取ってそうだし、真っ裸で寝てそうだと思いましたまる