Sarvant:assassin
『アンサモンプログラム スタート。零子変換を開始 します。レイシフト開始まで あと3、2、1……』
何の前触れもなく。それは突然訪れた。
『お待ちしておりました、マスター。ようこそ、こんにちは、うェるかむ。』
もう幾度となく経験したはずの、特異点へのレイシフト。頼れるサーヴァント達と共に。人々の未来の為に。今日も、戦うはずであった。
「……い、先輩。」
大丈夫ですか?と、少女が問う。自分を"先輩"と呼ぶ声は、見知った後輩、マシュのものでは無くて。長く淡い色の髪を揺らし、ベッドの横に佇む少女は"桜"と云った。
月の聖杯戦争。SE.RA.PHの造り出したムーンセル。その裏側へ落とされたマスターとNPCたち。
そこは、自分の居るべき世界では無かった。
「あ、あんた、新宿の……!」
「いよー、マスター。元気そうで何よりだ。」
呵々、と、男が笑う。
桜と名乗る少女に私のサーヴァントは教室で待機させていると聞いたのだが、待っていたのは新宿で敵対したアサシンであった。
「な、なんで……」
「さあてねぇ。俺様にも何がなんだか。」
人理は修復された。新宿にあった特異点も、今となっては正しい姿に戻りつつあるはすだ。彼とも、敵対する理由は恐らく無い。だが、警戒してしまうのは仕方ないだろう。
「呵々、こりゃずいぶんと嫌われたもんだ!」
男が、腰掛けにしていた机から立ち上がる。此方に向き合う彼に不思議と敵意は感じられない。相変わらず隙は無いものの、それはそのはずである。何の因果か悪戯か、彼は私のサーヴァントとしてそこに居るのだ。
「さあて、マスター。俺様は誰でしょう?」
男が言う。両手を広げ、敵意が無い事を示している。これは契約だ。
「…………燕青。」
「ご名答!やー、覚えててくれたかー!何だろうなぁ、嬉しいってこんな感じを言うのか?」
はしゃぐように笑顔を向けられるが、新宿での出来事がつい最近のように思い出され胡散臭い。話を聞けば、どうやら彼もまた気付いたら月の裏側に引き込まれていたのだという。
彼の調べによると、こちらに引き込まれたマスター達は、表の世界で聖杯戦争の最中にあった。サーヴァントの反応も幾つかあるという。つまり、それがどのようなものであれ、マスターである以上巻き込まれ兼ねない。それは彼の忠告でもある。
「……と来たら、賢明な判断は一つしか無いと思うがね。どうだい、マスター?」
「信用ゼロだけどね。まあ、無いよりマシというのは確かかも。」
「手厳しいねぇ。」
尚も両手を広げ敵意の無いことを告げる燕青に、折れたのはこちらの方だった。少なくとも、こんな所で死ぬわけにはいかない。彼とも新宿で縁が出来たのだから、召還されてもおかしくはないはずだ。そんな屁理屈で自分を納得させ、切っていたパスを解除する。改めて契約完了だ。散々コキ使ってやろうじゃないか。
「素直じゃないねぇ、マスターは。そんじゃ、改めて梁山泊百八傑が一人。サーヴァント、クラスアサシン、燕青だ。宜しくな、マスター!」
差し出された手に、宜しくと添えて返す。思いの外人懐こい笑顔をするのだと感心する。
「ところで、これも乾坤一擲って言うのかね?」
「アンタが言うと不吉ね、それ。」
呵々と、彼は笑った。
***
新宿のアサシンとそのまんま出会ってしまったver.
試行錯誤の表れ……的な?
mae | tsugi