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緑谷と喋ってたら轟が目の前のロボ集団を全部凍らせてくれたので中の電気回路を引っこ抜きながら轟の後ろを跳んでたら後ろでガシャンガシャン倒れる音がして轟のやり方結構えげつねえなって思った。倒す前提かよ。
『すげえな!!!もうなんかずりいな!!!』
放送で叫んでるマイクにめっちゃ同意する。だって別になにかと引き換えに能力得たとかじゃないじゃん?生まれつきって凄ない?しかみそれがこの世界全員って。まぁ、アイツは引き換えがなかったわけじゃなさそうだけど。轟の顔左側に広がる火傷のあとをちらっとみる。ちなみに通りすがりの目に入るロボの電源に繋がるっぽいケーブルを結構引きちぎったので追加で何台か倒れると思うので後ろの人はごめん。でも動かなくはしといたから。
『お!?!!知らねえうちにどんどんロボが倒れていくぅうう!?何が起きてんだァー!!』
マイクの叫び声と共に後ろから「誰か下敷きになったんじゃねえのか」とか聞こえるのでちょとやり過ぎたかなって思った。でもネズミへの嫌がらせなので許してほしい。まぁほら、うちのクラスのメンバーなら死にはしないだろ。
『各所に設置されたカメラロボが興奮をお届けするぜ!おー!?見てない間にA組名前•皇が轟の後ろに!いつのまにか移動したんだ!?』
時々現れてないと不正だーって言われてもなぁって姿出したらちょうどカメラ。凄い財力というかエンタメ性だよ本当。あんだけ写りたくなかったのにドアップでモニターに抜かれてるのがなんとなく想像できるので腹立ってめっちゃいい笑顔でピース振ってやったわ。マイクの横にいる相澤さんがちっちゃい声で『何やってんだ』って言ってるのもマイクのってるから。人から言われたら恥ずかしくなるやつだから。
「うっそ、やっと抜けたと思ったら階段がきつい」
ぴょこぴょこ跳んで轟に追いついたかなぁってところでそびえる階段。体力への負荷が凄くない?この後の竸技のことって考えてる?基礎体力があることを前提としてるのは分かるんだけど、俺みたいな特殊能力系の個性の子可哀想じゃない?いや、うーん、ヒーローとして活躍する上では必要なのか?あまりの根性論というかスポ根精神にびっくりしすぎて少しフリーズした。ようやく動き出して悶々と考えながら登っていると頂上で轟くんにバッタリする。
「お前....!」
いつのまにいたんだ...!って続きそうなリアクションありがとう。返事するのも面倒くさくてウインクする。顔しかめられた。
「それより前向こうじゃないの轟くんさ」
最近まじで敵は俺じゃなくて学校側だと思うんだよね。何この穴。
『落ちればアウト!それが嫌なら這いずりなァ!ザ・フォーーーール!!』
マイクの声が会場全体にこだまする。いや、落ちればアウトっていうか死ぬんじゃないか?さっきまでのきつい階段はこれの落差分ね、と妙に冴えたところで誰かに乗せていってもらうか跳ねるか悩む。うーん、跳んだほうが早そうだよね。初めの第一歩的なノリで一つ島を進むと後ろから不敵な笑いが聞こえて気になっちゃう。すごい気になっちゃう。
「麗日、何あのメカメカしい子」
気になりすぎて戻ってきちゃった。
「うお!名前くんいつからいたん?彼女はサポート科の子だよ!」
「イエス!サポート科の生徒は公平を期すために自分たちが開発したアイテム、コスチュームに限り装備オッケー!むしろ己の発想・開発技術を企業にアピールする場なのです!!」
ゴツいゴーグルをかけた彼女はそういうと胸に取り付けられた装置からロープを発射して次の島へと飛んでいく。なるほど、全科の生徒が体育祭で就職活動もできちゃうってことね。「負けらんないね」と麗日に声をかけてからまた自分を軽くしてピョンピョン島を渡っていくがいろんな生徒がいるせいで微妙に風が起きて飛びにくい。やっぱ誰かに捕まってればよかった。あー、失敗しちゃったなと思っているところにカモネギ。爆豪が手で爆発を起こした勢いでドンドン前に進んでいる。スススッと近寄って爆豪に気づかれないくらいの重さで体操服の襟を掴む。ズルじゃないよ、ズルじゃ。
少し実体化しているが、爆豪は前にいる轟に夢中で俺に気付いていない。そんな俺を見つけたのかドローンがまた近づいてくるのでウィンクしといた。
放送のマイク越しに「何やってんだ」って相澤さんの声が聞こえたので俺を切り抜かないで!ノリだから!ちょっと恥ずかしいから!と視線をずらすとトップで島を渡りきった轟の方にドローンが寄っていく。あれだけカメラ移りたくなかったのに人間やけくそになると本当にどうでも良くなるんだなって思った。なんか一応秘密結社なのにド派手に闘うボスだったし、その精神が受け継がれてると信じたい。事務班とか現状復帰班とか情報捜査班は大変そうだったけどな。まぁみんな「クラウスさんだから」って手慣れてた気がするけど、そういえばいつからあんな派手に活動し始めたんだろうな。牙狩りの時はもうちょっと大人しかった気がする。
ふーむ、と自分がカメラに写る意義とか、職場のことを考えてると次のステージだったよ。爆豪の襟から手を離す。
「お邪魔しましたー」
「ああ゛?テメェ勝手に乗ってんじゃねぇ!!」
「ふは、気付いてないのが悪いんじゃね?」
今回の体育祭での俺の目標がティーン達の出鼻というかプライドを崩していくというかまぁ単なる八つ当たりなんだけど、なのでブンと振り回された腕をひょいと避けて言ってやると盛大な舌打ちを受けたよ。最近のティーンって怖い。ま、視線はずっと轟の方なのでトップを走ってきた標的にしか今は興味がないんだろうと馬鹿みたいに地雷がまかれた地面を普通に走る。いや、だって重量で反応する対応でしょ?熱探知とか気配探知とかじゃないなら普通に走ればってめちゃくちゃうるさいな?!
ドゴォオオンと周囲を切り裂く様な音を立てた後にマイクから『地雷の威力は大したことねぇが音と見た目だけは派手だから失禁必死だぜ!』と声が入る。先に言おう?大事なのは報告連絡相談だよ?耳がギュンギュンしてる。風圧でちょっと横にずれたらまた違う生徒が地雷を踏んで大音量がする。なんかすごいストレスがたまる竸技なんだけど。さっきまで少しあったやる気が徐々に失われる。だっていい大人が青春の汗を飛び散らしながら頑張ってる生徒達に混じってて、なんかその競技もちょっと子供騙しというか。良くも悪くも俺の能力で簡単に突破できる様な内容だからやる気が起きないというか。
「ぐ、なんか猛烈に熱が覚めていくのを感じる」
先頭の方では爆豪が轟を抜いたって盛大に実況してるけど、そりゃあ火力でぶっ放せばいいんだもん。轟が氷で全部固めても滑らない靴で走る、とか全然使う気配のない炎の個性で爆豪と同じ様に勢いをつけるかしないと普通に走ってるだけじゃ抜かされるだろ。実況をのんびり聞いてるけど俺の順位もだいぶ落ちていてると思おう。普通に走るのって一番だるい。人も多いし。俺人混み苦手だし。
ドォォォォォオオオオオン
先ほどから鳴り響く地雷の音がより一層大きく聞こえる。音がする後ろを何事だと振り返ると、金属の板?ロボの一部?をスケボーの様に下に持って爆発の勢いと共に緑谷が飛んでくる。いや、え?どういうこと?
「いやぁ、やっぱこういう予想できないことをしてくる奴が1番面白いよね」
「あー、脅威ではあるよな。つか名前もっと前にいなかったか?」
たまたま近くにいた瀬呂に話しかけると焦った様な悔しい様な顔を浮かべてうなづく表情にちゃんと本気で体育祭に挑んでいることがわかって少し反省。もうちょっと真面目にやらなきゃな、と思わされる顔付きだった。
「んー、ちょっと休憩。でもなんかちょっとまたやる気が出てきたから先頭に戻ろうかな。ありがとう、瀬呂」
「はっ、嫌味かよ!」
ちゃんとやれよ、と送り出されてしまったからしょうがない。しっかり体を軽くして走る。地面に足がつく瞬間だけ足の爪先に荷重をかけて加速する。目の前にいて邪魔な生徒を通り抜け、派手な爆発の風圧さえも通り抜けるほど透過する。爆風を通り抜けると見覚えのある何人かのA組を見かける。飯田結構前にいたんだな。先頭争いは轟と爆豪で、ちょうど上から緑谷が落ちてくるタイミングだった。上を見上げながら走っていると高度がドンドン落ちてくる緑谷は着地どうするんだろうか。
「デクゥ!俺の前を行くんじゃねぇ‼!」
「うお」
爆豪が叫んでさらに加速する。その熱風が顔に当たって暑い。クッソ、暑いと思っていたら今度は轟が地面を凍らせて寒い。寒暖差が凄い。風邪ひいちゃう。もうちょっと滑らかな氷を引いてくれればスケートっぽく滑って行けたのにな。
鉄板を持って滑る様に飛んでいく緑谷が失速すると鉄板の重みで頭から落ちてくる態勢になる。それでも鉄板を離さない根性がすごい。そしてそのまま鉄板を地面に叩きつけて地雷を更に加速する。
「なるほど、そういう策ね」
勢いを再び取り戻した緑谷がデカい爆発音のまま転がる様にゴールラインを破る。轟、爆豪に続いてゴールへ入る。割と真面目に走ったというか跳んだのでちょっと疲れた。
「あー、しんど」
ドームに戻ってきて腕を伸ばす。まぁ、面白い展開を見つつそこそこの順位なのでいいんじゃないだろうか。これで棄権しても飛ばしすぎて体力持ちませんでしたって感じにならない?どうかな?
ある程度の人数が帰ってきたところで順位の集計が行われる。上位43位以降は切り捨てだって。厳しい世界だ…。なんでそんなキリが悪いのかもめちゃくちゃ気になるんだけど。普通50位とかじゃないの?総合司会のミッドナイトによって名前が読み上げられていく。A組結構残ったな。さすが強制的に実践をしただけあるよね。普通科の生徒も結構残ってて宣戦布告をしただけはあるっぽい。その宣戦布告の場面ちょうどいなかったからどれほどの熱量だったかは知らんけど。
『そしていよいよ本戦よ!』
ん?マイク越しにミッドナイトの不穏な声が聞こえた気がする。
「待って待って、尾白、今本選って言った?これで終わりじゃないの?竸技2つまでだったよね?あれ?』
「名前、お前ちゃんと聞いてたか?予選競技1つ、本選競技が強制で2つだろ。」
「名前・皇、棄権させていただきたく」
「ダメだろ」
それって結局両方強制参加じゃん。うわーんって尾白の尾っぽに抱きつきながらワンワン泣く真似をする。本心は割とガチで泣いてる。ミッドナイトはそんな一生徒を見てくれているわけでもなく体育祭の進行を進める。
『次の競技は騎馬戦よ!先ほどの結果に従って個人にポイントが割り振られていくわ』
「あー、入試の時の!」
「つまり組み合わせによって騎馬のポイントが変わるってことか」
砂糖や上鳴が細かく解説してくれたので大体の生徒が仕組みを理解する。なるほどねぇ。
『そして!!!!!1位のポイントは1000万!』
「バラエティかな」
思わず声出ちゃった。最後に『この問題に正解したら3億点!』とかとおんなじ次元じゃない?追われるものの立場を理解しなさい的な?下克上マッチじゃん。仲間になれば点数って山分けかな。これよりこんだけ走ってみんな汗だくの中で騎馬組むの嫌じゃない?男女混合でしょ?
「青春って汗臭いな」
「空気読んで、名前」
「シャワー休憩入ります!」
「入んな」
尾白のノリがいい。
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