1
「ドフィ、ドフィ。どこなの」
すぐ目の前にいるのに、太郎のすすり泣く声はやまない。こんなはずじゃなかった。こうじゃなかった。
ー愛着形成についてー
太郎の最初の記憶は暗い部屋で大きな怒鳴り声とともに飛んでくる衝撃だった。殴ったり蹴られたり、それはいつも暗い部屋だった。
成長すると共に明るい時でも雑用などの労働を与えられるようになった。それでも暗い部屋に連れて行かれることもあったがニコニコと笑って相手の言うことを聞いていればその回数は減っていった。
太郎は所謂孤児だった。海賊の略奪、海軍との戦い、民族同士の争いなどこの時代には珍しくなかった。むしろ生きているだけ運が良かった
成長と共に仕事も増え、内容も変わっていった。労働よりも顔や体や愛想を振りまくことを求められるようになった。それでもニコニコ笑っていれば飯は食えるし、暗い部屋で殴られることも減った。
主人を変え、土地を変え、海を変えても太郎の役割はほとんど変わらなかった。
ある時、太郎は失敗した。なるべく笑顔でいようと努力していたことが裏目に出たらしい。誰にでもニコニコとしていたのを主人は気に入らなかったようで気がつけばまた暗い部屋の中だった。
「旦那さま、ごめんなさい。旦那さま。」
必死で謝る太郎に主人は「今日は客人がくるからあと1日そこにいなさい」と言った。これほど明日が待ち遠しい日はなかった。
七武海で国王のドンキホーテ・ドフラミンゴがその屋敷にやってきたのは仕事の会合でだった。話し合いの後に食事をしたいという屋敷の主人に時間を合わせるため屋敷の中を回っていると、掃除の行き届いた部屋の中、カーテンもドアも締め切られた部屋を見つけた。
ふと気になったので「ここはなんの部屋だ」と聞くと「旦那さまにしかわかりかねません」という応えたのがなんとなく気に食わなかったので糸で鍵を作って開けると1人の少年とも青年ともわからない男が暗い部屋でボロボロと泣いていた。
そのままその屋敷の主人に「あれをくれ」と言ったのは単なる気まぐれだった。
七武海に恩でも売っておこうと思ったのだろう、あんな部屋に隠していた男をあっさりと渡した。
太郎というらしいそいつは、急にきた客人に引き渡されたというのに微笑んでついてきた。なるほど、たしかに見れる顔をしている。ふにゃふにゃとした微笑みも囲いたくのもなんとなくわかる気がした。がそれ以上になんの役にもたちそうになかった。
人のもだったから欲しくなったのだろうか。ドフラミンゴ自身にもよくわからなくなっていた。
- 5 -
*前次#
ページ: