きみと過ごす昼下がり



おいしい団子屋ができたから食べに行かないかと言うから、早速その日、食べに行くことにした。
久しぶりに出掛けるから、ついつい気合いが入り、そわそわしながら門の外で待っていれば、通用口から待ち人が出て来るのが見え、勢いよく身体を起こした。
「ごめん、桜。遅くなっちゃった」
通用口をくぐるために屈んでいた体を起こしながら謝る尾浜に、桜は笑ってみせる。
「ううん、そんなに待ってないよ」
楽しみにしていたから、少し長く待っているようにも感じたけれど、実際はそんなに待ってない筈だった。
それを聞くと、尾浜はにっこり笑って、左手を差し出してくる。
「じゃあ、行こっか」
そう言って、桜がその手を取るのも待ちきれないように、自分から手を握ると、尾浜はもう歩き出していた。

聞いたところによれば、その新しくできた団子屋はそんなに遠くないらしいから、そんなにスタスタ歩いて行ったら、すぐに着いてしまうんじゃないかと思えた。
「勘右衛門。もうちょっとゆっくり!」
普段と違って草履だけど、それなりに速く歩けるものの、尾浜の歩調は桜には速かった。
それを聞くと尾浜は歩くスピードを緩め、それからばつが悪そうに笑ってみせた。
「ごめんごめん。うれしくって、つい気が逸っちゃった」
と、言うから、そんなふうには見えなかった桜は首を傾げてしまう。
「……一緒に出掛けられるから?」
そうだったらいいなと思って聞いたことだったが、尾浜はそれにくすぐったそうな笑みを浮かべてみせると、うんとうなずいた。
「それもあるけど、桜、可愛いいから」
学園にいるときは忍びの服ばかりだから、新鮮に見えるのかもしれない。
それでも、可愛いなんて言われると思わなかったから、うれしくなってしまう。
「……ね、もう少しゆっくり歩こう? おいしいお団子屋さんも楽しみだけど、勘右衛門ともっとたくさん一緒にいたいから」
店を見るのも嫌いじゃないし、町に行ってみるのも楽しそうだったけれど、いまはただ尾浜と一緒にいられればよかった。

風は気持ちいいし、天気も良好。
まわりにはあんまり人もいなくて静かだから、この中をのんびりと二人で歩くのもいい気がした。
「そうだね。おれも、桜ともっといっぱい一緒にいたいかも」
はにかむように言って尾浜は、つないでる手にぎゅっと力を込める。
足は相変わらず団子屋に向かっていたけれど、その歩みは遅く、まだまだ陽の高いこの時間を一分一秒でも無駄にしないようにと、桜も尾浜も、いまこの時を大事にしていた。



End.

















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ほの甘…?
分類するの苦手ですみません。
勘ちゃんは、もっとのほほんでもいい。


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