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素早い尾浜の行動に苦笑しつつ、鉢屋もようやく傍に行くと、その隣に腰を下ろした。

「団子、四つも食うのか?」
出された茶に早速口を付けている尾浜に問えば、んー、と曖昧な返事が戻って来る。
「もしかしたら食うかもしれないけど、半分は鉢屋の分ね。二つくらい食うだろ?」
そういうことじゃないかと思ったが、よく気がまわる尾浜に鉢屋は笑っただけだった。
団子は思っていたよりおいしくて、これだったらまた食べに来てもいいかと思ったくらいだった。


「……あ、やっぱりそうだ。こんにちはー」
団子のお代わりを頼んでいた尾浜がこちらを向く前に、どこかに向けてあいさつをしていたものだから、興味を引かれて鉢屋も振り返るものの、相手が見えない。
「勘右衛門。誰と話してんだ」
そう聞いてみれば、その相手が近づいて来てくれたようで、
「食満先輩たちだよ」
と、尾浜が言うのに合わせ、彼らが姿を現した。

食満たち、と言うくらいだから一人ではなくて、他に立花と桜も一緒にいて、まためずらしい三人組だと鉢屋はぼんやり思う。
しかし、桜が保健室で休んでいたときに様子を見に来たのも確か、食満と立花の二人ではなかっただろうかと、鉢屋は思い出す。
もしかすると別々で来たのかもしれないが、六年生も仲がいいのでおかしくはないのかもしれなかった。

「尾浜くんと鉢屋くんて、めずらしい組み合わせね?」
そう言う桜の言葉で、ようやくちゃんと桜に視線をやった鉢屋は一瞬、その姿に目を奪われた。
桜がいるのはわかっていたものの、それだけだったのだ。
「五年生は本当に仲いいわね」
食満と立花を振り返って笑う桜に見惚れそうで、鉢屋は微妙に視線をそらし、小さく息を吐いた。

考えてみれば、私服を見たのは初めて桜のことを認識したとき以来だが、一応、今回で二回目だ。
あのときはともかく、今回改めて見ると、美人だという感想は避けられそうもない。
それが癪だと言いたいわけではないが、桜に見惚れそうになる自分が嫌だった。
淡い藤色の小袖がまたよく似合っているし、背中で緩く結ばれた髪が、いつもの桜と違う雰囲気をまとっていた。

「私たちも団子をもらおう」
後ろの長椅子に腰を下ろした立花たち三人も、どうやら団子を食べに来たらしい。
尾浜のようにしんべヱに聞いて、というわけではなく、たまたま通りかかって見かけたので、食べに寄ることにしたらしかった。



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