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それは事実であり、鉢屋もよく知っているし、自分が考える分には気にならなかったけれど、尾浜に言われたことで心臓が跳ねたことに、鉢屋は戸惑いを隠せなかった。
動揺している? 私が?
信じられないと首を振り、鉢屋はそっと息を吐いた。

「……本当のところは知らないが、確かに新実先輩が八左ヱ門のことを気にしている節はあるんじゃないか?」
できるだけ平坦にそう返してやれば、やっぱり? と、尾浜は興味があるんだかないんだかわからないような表情でうなずいた。
「でも、八左ヱ門は女の子に興味があるのかないのかわからないけどね」
毒虫や動物が一番に見えると尾浜はからから笑うが、確かにそれもわからなくはなかった。

学園に帰れば、委員会の仕事を終えたらしい不破が戻って来ていた。
竹谷も戻っているらしいのを聞いて、尾浜と二人で部屋を訪ねれば、やはり部屋にいた。
「おー、おかえり、二人とも」
鉢屋たちの顔を見るなり、竹谷がそう言って手を挙げたので、それに応えてから、尾浜と二人で目の前にどっかり座る。
「みやげもらったんだ。八左ヱ門にだって」
団子屋で桜たちに会った話をしてから尾浜が包みを渡せば、竹谷は目をぱちくりさせ、それからすぐにうれしそうな顔をした。

「ああ、そうだ。雷蔵たちも呼んで来れば? 茶入れるし、みんなで食おうぜ」
包みは一本二本じゃないとわかるからか、竹谷がそんなことを言い出す。
「桜先輩のことだから、兵助とかみんなの分も買ってくれてると思うし」
そう言うから、尾浜は久々知を、鉢屋は不破を呼びに行くことにした。
尾浜と鉢屋はいま食べて来たし、本数がなかったら自分たちが食べなければいいのだし、あの包みは確実に三本くらいは入っていそうだったから、行動に移したのだった。

結局、包みの中には団子が五本も入っていて、一人一本食べることができた。
桜はちゃんと、五年生の人数をわかっているらしい。
「あの人、そういうとこちゃんとしてるから」
と、竹谷は言っていたが、それが誉め言葉として放たれたものかはわからなかった。



夏休みはそれからすぐで、始まって早々に家に帰ることにした。
早めに戻って来るつもりだったから、帰るのも始まってすぐにしたのだ。
途中まで不破や竹谷と一緒だったが、それから別れて一人で帰路に着いた。
夏休みの宿題もあったし、早々に終わらせ、あとは自習と自主トレに明け暮れたが、思ったよりはかどらず調子が悪かったので、結局、予定していたより早く学園に戻ることにした。



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