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話に参加せずに、マイペースに豆腐をつついていた久々知が、急に顔を上げてそう言い出したものだから、桜はぎょっとする。
尾浜はともかく、久々知がそう言い出すとは思っていなかったのだ。
それは他の人にもそうだったらしく、みんな怪訝そうな表情で久々知に目を向けていた。

「兵助。それ、勘違いとかじゃなくて?」
真っ先に突っ込んだのは尾浜で、だけどみんなうなずいているということは、考えていることは同じなのかもしれなかった。
「勘違いかはわからないが……善法寺先輩に贈り物をもらって、桜が喜んでいたのは本当だ」
記憶をたぐり寄せるようにしてそう久々知に言われ、心当たりのあった桜はもしやと思う。
別に、こそこそしていたわけではないので、見られていても仕方がないのだが、まさか久々知に見られていて、ここでその話が出るとは思わなかった。

「善法寺先輩からって、何もらったの?」
くりっと顔をこちらに向けて、尾浜がダイレクトに質問してくるので、矛先を向けられた桜は先に苦笑をもらしてしまう。
「……ええと、ギニョールを」
よくわからないが、どちらも変わらないだろうと桜がそう言えば、今度は竹谷に取って返すような速さで、
「誰の?」
と、聞かれた。
「た、タソガレドキ忍軍の組頭の、です……」
まさか、これを自分から言うはめになるとは思わなかったので、非常に言いづらかった。

「桜、まさか口説かれて好きになったとか言わないよね……?」
そう聞いたのは不破だが、その話は桜はしていなかったので、鉢屋か久々知に聞いたのだろうか。
「それなら、もっと早くに行動していると思いますが?」
城に忍び込んだのは、どれだけ前の話だというのか。
しかし、じゃあなぜだと言われたら、やはり伊作が提案してくれた通りの理由くらいしか思い浮かばなかった。
「伏木蔵が持っていた雑渡さん人形が可愛くて、欲しくなったので」
それしか言えなかった。

「……で、結局、桜の機嫌がいいのはその曲者ギニョールのせいなのか?」
話を振り出しに戻すようにして竹谷がそう聞き直してくるから、桜は答えに窮してしまう。
確かにそうなのだが、厳密に言うと違うし、かといって安易に返事をすると突っ込まれるからと、桜はどう答えていいかわからなかったのだ。
「……な、内緒です……」
困って桜がそう言えば、竹谷たちは納得してくれたけれど、鉢屋だけは一人で、何やら言いたそうな顔をしていたのが気になった。



End.























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こちらは後日談の話でした。
やっぱり、変わらずに五年生とは仲がいいと思います。



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