02
いまちょうど頭の中で、善法寺伊作に聞いたことを思い出している最中だったと、三反田は教えてくれた。
だからその実を取るべきか、取らぬべきかを図りかねているのだろう。
桜が助言できればいいが、ああいうものを薬に煎じて使うことをしたことがない身からすれば、全く見当すらつかなかった。
「……試しに一つ、取って来てみようか? 近くで見ればわかるかもしれないよ?」
遠くからではよくわからないだろうと、そんな提案をしてみれば、三反田が微妙そうな顔でこちらを見た。
「……ぼくは、まだあそこまで登れませんよ?」
塀か何かあれば、そこを足場に登れると言うが、この木はあまりに高すぎるらしい。
「あたしが行ってくるわ」
桜は現代っ子とはいえ、山生まれなので、これでも木登りは得意だったりするのだ。
もらった忍び足袋ではまだ木登りはしたことないが、靴よりは登りやすそうだった。
「あっ、危ないですよ、桜さん!」
木の幹に足をかけた桜に、慌てたように三反田がそう声をかけて来るが、桜はすでにもうするすると上に登り始めてしまっていた。
一番下の枝が一番太くてしっかりしているから、桜はそこに腰かけると実をもいで懐にしまうと、今度は逆の手順でするりと降りる。
ちゃんと登るだけでなく、降りるのも得意なので、何の問題もなかった。
はい、と取って来た赤い実を渡せば、三反田はそれをジッと見ていたけれど、やおらガッカリしたような顔で小さく息を吐いた。
「違いました……。せっかく桜さんに取っていただいたのに、すみません」
やっぱり近くで見たらそういうこともあるだろうと桜は納得するが、三反田は申し訳ないと思っているのか、ずいぶんと気落ちしているようだったから、少し考えてからまた口を開く。
「そんなに気にしなくても、これは自分のために取ってきたと考えれば、別に構わないでしょう?」
そう言っても、三反田はまだ納得が行かないような顔をして、桜の手の中の木の実をジッと見ていた。
「そんな実を欲しいと思うことなんて、あるんですか?」
自分のために、とは言うが、使い道のないものを欲しがるものなのかと聞きたいらしい。
何の変哲もない木の実だから、そう言われるのはわからなかった。
「うん、あるよ。三反田くんが気にしていた実なんだから、それが役に立たないものでも、あたしには特別なものになるんだもの」
それは立派な欲しがる理由にならないかと桜が言えば、三反田は目を真ん丸にして驚いたような顔をしていたけれど、直後、ゆでられたみたいに耳までを真っ赤にして、恥ずかしそうにうつむいてしまった。
End.
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勢いなら多分、数馬は負けてしまいそうかなと思います。
でも、あれでいてしっかりしているところもあるので、やんわり押し戻されたりしそう…。
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