02
医務室には誰もいなくて、だけど三反田は保健委員だし、この間も同じように一人で桜のことを診てくれたから、今日も全く同じだった。
薬棚をあさっている間に、手を洗って下さいと言われたので、手水鉢代わりの桶で手をゆすぐと、手拭いで手を拭きながら部屋の中央に戻った。
そのときにはもう用意が終わっていたらしく、三反田が手慣れたように傷口に薬を塗ってくれた。
染みる薬草ではないと言っていたものの、傷口が濡れたせいなのか、痛いというほどではないが、ほんの少しぴりぴりした。
「もっと、自分を大事にして下さい」
治療を終えた三反田は、今度は片付けながらそう言うけれど、果たしてここは怒られるところなのだろうか。
だが、そんなことを言ったら、またさっきと同じことになるので、桜は応じるようにうんとうなずいただけだった。
年上である自分が譲るべきだから、と桜は思ったに過ぎないが、大した年の差があるわけでもないし、そもそも桜はこの世界の人間ではないのだから、三反田の言うことのほうを聞いておくべきなのだ。
「ごめんね?」
思い直して謝れば、三反田は面食らったらしく、いままでの強気が嘘のように急に勢いをなくす。
「いえ……あの、ぼくも言い過ぎました……」
三反田は正論しか言ってないし、失礼なことも口にしていないのだが、そう謝られる必要はなかった。
「でも、三反田くんは心配して言ってくれたんだもんね。うれしかったよ?」
改めて考えなくても、三反田が自分を気遣ってくれたことは、桜にとっては喜ぶべきことなんじゃないかと思えた。
「あの、でもやっぱり、ぼくも言い過ぎました」
再び同じことをおずおずと口にする三反田に、桜は何と言っていいかわからなくなる。
そんなに責任を感じてもらうと、どうしていいか戸惑うのだ。
「桜さんは……その、この学園の前に倒れていたときの印象が強くて……あのときは本当に、死んでしまうんじゃないかというくらい真っ青な顔色だったので、つい勝手に身体が弱いような気がしてました……」
だから、小さい怪我も気になってしまったのだと三反田は言う。
あのときのことは、自分ではよく覚えていなかったから、それを言われたら、余計に適当なことは言えなくなる。
「えーと……ありがとう、ね……?」
結局、三反田が心配してくれていることには変わりがないから、そう言うしかなくて、桜は照れ隠しもあり、それだけしか口にできなかった。
End.
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怪我、特に小さい切り傷やすり傷に対する認識は違うんじゃないかなと、そんなところから来ています。
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