09
何が起こったかわからなかった。
自我を失う事って本当にあるんだなって思った。
「三条凪くん」
目の前には倒れている中等部生がいたのは覚えてる。
いつもならそんなことないのに。うまく制御できなくなったアリスで彼らに怪我を負わせてしまった。
「ようこそ、危険能力系へ」
騒ぎに気付いた先生達が集まり僕は本部の一室に連れていかれた。
そこには行平さんや、鳴海先生、それから
初等部校長先生がいた。
「今回の騒動で、私は彼のアリスは十分に危険能力に値すると思うよ」
視線を僕に向け、妖しく笑う。
「しかしっ!!!」
危険能力系への移動を巡って行平さんが声を荒らげてる。
「いつも、一人ぼっちらしいね。」
「え‥‥?」
コツ‥‥コツ‥‥
「学園での噂、聞いたよ。可哀想に。」
僕と同じくらいの身長の彼は一歩ずつ近づいてくる。
「友達を傷つけられて、さぞ悲しいだろう」
彼の口から這うその言葉は、僕の心の傷口をぐりぐりと抉る。それから逃れたくて、距離を縮める彼から、同じだけ後ずさる。
どん‥‥
部屋の壁に追いやられ、尻餅をつく。
そんな僕の顎を掴み無理矢理上を向かされる。
「天音 隆道は、君の元養父‥‥だったかな?」
「っ!? なぜそれを知っているっ‥‥。」
間に入ろうとした行平さんの眉間のシワがどんどん濃くなる。
「あんな死に損ないのために、この学園に来たらしいね?」
「い、いや‥‥」
「あんな、明日にでも死んでしまう彼のために‥‥。」
「やめてっ‥‥聞きたく、ないっ」
ボロボロと涙が床に落ちていく。
それ以上、聞きたくない。
泣きじゃくりながら弱い力でもがく。
「君はこの学園に売られたんだよ。」
ぶつん。
2度目
「が、餓者、髑髏(がしゃどくろ)‥‥」
ぱん!
今日2回目の、自我を失った瞬間だった。
オオオオオオオオオオオオオッ!!!!!
天井を突き破りそうな骸骨が姿を現し、大きな手を初等部校長目掛けて振り落とす。
僕の妖変化のアリスの発動条件は“両の掌を合わせること”。
手の平を合わせれば、
拝むことも、
アリスを使い誰かを守ることも、
喧嘩した後の仲直りも、
なんだってできてしまうんだよ。
爺様が僕にそう言ったのを思い出した。
−−−−−−−−−−−−
Q 餓者髑髏って?
A 要するに骸骨ってことかな(きりっ)
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