追憶の欠片



0711
Tue

八百万百は執心する


※7話以降に該当

個性把握テストの日。
声をかけて来た方をずっと男性だと思っていましたが、実は女性だったのだと制服姿を観て落ち込んだのは内緒ですわ。
言動を観察していても、彼女は何処か私と似たような空気を感じて親近感を勝手に湧かせていましたが、話せるきっかけというのもあまり見つからずに居た。
けれど、轟さんの一件で声を再びかけられたことにより、試しに彼女にこちらか接触をはかってみた。

「あの」

声をかけると彼女は麗日さんと談笑していたようでしたが、私の方へ振り向き。口角を和らげたまま。

『どうかしましたか?』

その訊ね方一つ一つがどうしても、惹かれるものがある。
まるで、御伽噺に出てくる王子のようで所作さえ美しいと思う。

『その説はありがとうございました。席、替わってくれようとしてくれて』
「あ、いえ。あれは轟さんの責めの姿勢が目に余るものでしたので」
「あれは凄かったよね。私も何かしようと思ったんだけど、何も思いつかなくて…」
『ありがとうございます』

何処かの青年貴公子かの如く微笑に優雅さと気品を感じながらも麗日さんと共に見惚れていた。
背丈も私より少しばかり高い上に細身の体型。割と筋肉質な身体。

「……男性だったら」
「凄くモテそうだよね」

麗日さんと共に目を合わせて互いに思うことは同じだった。

『(胸でかいなこの子……)牛若丸さん』
「えっ?!」
「違うよ八百万百さんだよ」
『(乳…?)もも?ちゃん』
「(名前で呼ばれた…!)は、はい。その…」
『呼び捨てでいいですよ』

微笑み携えて彼女は優雅に私の手を取った。

『茶々ちゃん』
「お茶子だよ、…もう名前憶えて欲しいよ」
『…ごめん』

名前を憶えるのが苦手のようですが、困ったように微笑まれてしまうと許してしまう。
A組女子の中でそれが広まった。

(格好いいわよね、人の名前憶えないけど/梅雨ちゃん)
(紳士だしさ。この前教材運ぶの手伝って貰ったよ!/三奈ちゃん)
(帰り一緒に帰った時なんて車道側歩いてくれたんやけど/お茶子ちゃん)
(顔綺麗だし、うちのクラスの男子にない美男子っぷりだよね/葉隠ちゃん)
(頭よくて運動できて、個性も優れてて…神に愛された人じゃん/耳郎ちゃん)
(彼女が殿方だったら戦争ものですわね/八百万ちゃん)

(女子全員女に持ってかれた……/峰田)




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