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「やだってば!絶対無理!!」


ほづみんがダイアンさんに捕まり例年の如く女装をさせられるために、連行されていた。


「ここまで来て往生際が悪いわよ!」
「祈ちゃんやアリスちゃんに、桜井さんが居るんだからいいじゃん!僕だって祈ちゃんとツ―ショット撮りたい!」
『NO』
「即答ッ?!」
『もう沢山撮ったから、私は無理。ごめんねほづみん。普通のツ―ショットならいいから』


その言葉にピタリとダイアンさんが止まった。そしてほづみんに耳打ちをする。


「 大人しく着てくれるなら祈とツ―ショット撮らせてあげるわよ 」
「 !本当……? 」
「 ええ。だから祈を捕獲して来て頂戴 」
「 承知しました!お姉さま! 」


小声で会話をする二階の二人に首を傾げる。隣に立っているひ―ちゃんは「 嫌な予感するな 」と身震いをしていた。確かに肌寒いとは感じるけど……ま、まさかね?


「祈ちゃん」
『わっ!ほづみん。いつの間に……』
「一緒に行こう」
『へ?』
「一緒に行こう」
『いや、だからちょっとほづみん?!男の子の力が発動しているよ?ちょっ、待って!やだって!もう着たくない!化粧もイヤっ!裏切りものっ―――』


ほづみんは「 一緒に行こう 」しか言わずどこかのロボットみたいに私を手首を掴んで引きずる。ひ―ちゃんに振り返るけど、敬礼していた。あゆむん然り。


『助ける素振りくらいしろ――!』
「さらば祈。骨くらいなら拾ってやるよ」
「さらば恙御氏。拙者は海にまきましょうぞ」
『死後確定じゃない!お、覚えてろそこのふたりぃぃぃぃ!!』
「暴言を吐く祈さんも素敵です!」
「純も助けてあげようよ」
「桜井だって見送る組でしょ?」
「だって祈先輩の次なる衣装が気になるんだもん」
「わかる、その気持ち」
『勝手に女子ト―クするな!うわぁああああんんん。きょうちゃ―――ん!!』


虚しくも幼馴染の名を叫んだけれど、助けになど来るはずもなく、二階へ連れて行かれ鉄のドアを閉められた。







「祈はコレでいいわね」


ビスチェタイプの黒のワンピース。膝上くらいの丈で靴も黒のパンプスだった。シンプルな衣装でとても身軽。ダイアンさんにしては珍しい……。


「大人しくしてなさいよ」


釘を刺すようにダイアンさんは言うけれど、大人しく待っている何て事はせず。ほづみんのメイクに注視がむいている今のうちに静かに脱走を試みた。結果、成功して現在逃走中である。


『大人しく捕まるもんですか。絶対にもう撮りたくない!』


地下の駐車場の通用口に駆けこみ。自由を手にと思ったら視界の端に服が見えて、人がいる事に気がついた。
ヤバイ……!!
急に止まる事も出来ないので天井の高い位置まで走行し直前で跳躍した。そこにはりっちゃんとたけちゃんが居て。驚いた顔をして私を見上げている。けれども着地地点に別の人がいる事に今度は私が驚いていた。二人だけだと思ったら他に三人いた。しかも見覚えのある制服を着ている。


『どいて――!』


そう呼びかけると桃色の長髪を束ねる、長身の男性が落下する私を軽々と受け止めた。


「相変わらずお転婆お姫様ですね、祈さん」


その柔らかな声に、目を開けると見知った顔が目の前に居たのだった。


『静馬!』
「お久しぶりです」
『じゃなくて、し―ちゃん。どうしてここに?』
「収録ですよ」
『なるほど。相変わらずお忙しいようで』
「いえ、あなた程ではありませんよ。神童さん」
『意地悪だな』
「あなたが反則するからですよ」


柔らかく微笑まれてしまう。本当に女の私から見ても理想の女性像がここにいる。
そんな私達のやり取りを呆然と見ている金髪の男の子が居ることに気がつく。


「まだ紹介してませんでしたね、黛遊馬。私の愚弟です」
『初めまして恙御祈です』
「……」


あれ?外したかな? 頭を下げていたのだが顔を上げて男の子を見つめるが、放心状態だった。


『し―ちゃん。遊馬くんが固まってるんだけど』
「ああ、気にしないでください。祈さんの事が好きで念願叶って対面出来た事に喜んでいるだけなので」
「勝手にバラすな!」


顔を真っ赤に染めながら憤慨したことにより、やっと動き出した。


「だったら自分の口で言えばいい」
「わぁってるよ!…その前に。いい加減下ろせよ。怜治さんがずっとスタンバってるからさ」


遊馬くんが指摘するとし―ちゃんと二人で視線を、下に向ければ。確かに両手を広げたまま諏訪怜治がスタンバイをしていた。
それを見てから互いに顔を見合わせてゆっくりと地面に下ろしてくれたし―ちゃん。
降りたら降りたでれいちゃんが私の片手をとりその手の甲に口付けを落とした。


「久しぶりだね祈。去年は君に会えなくて淋しかったよ」
『言葉が巧みだな、れいちゃんは』
「本心だよ。それから静馬。さっきのは酷いよ。俺が受け止めようとしたのに」
「すみません。次は気をつけますね」
「そう言って去年も俺が祈に会うのを阻止したよね」
「さて。何のことでしょう?ああ、祈さん。今日の衣装は大人っぽいですね」


さりげなく話題を逸らすし―ちゃん。だが、既にれいちゃんは私の背後に回って後ろから抱きしめていた。


「会うたびに祈は綺麗になっていくね。少し心配だよ」
『コラコラ、れいちゃん。離れて離れて』


トントン、と腕をノックするけれどそれでは離れないことは百も承知。何でこんなにスキンシップ激しいのかは不明である。
あんまりくっつかれるとし―ちゃんが恐い顔するから離れるなら離れてほしい。


「 遊馬。いけ 」
「 今この場でその指示かよ! 」
「 あ・す・ま・い・け 」
「 ……はいはい。お兄サマ 」


黛兄弟がコソコソと話をしたのち、遊馬くんが私の前に立つ。するとし―ちゃんが自然とれいちゃんに近づき笑顔のまま引き剥がした。


「ちょっと、遊馬がお話があるそうなので」
「別に引き離す必要はないんじゃないかな?」
「怜治様は意地悪ですね」


背後でド天然が何かを言っている気がする。振り返らないでおこう。まだし―ちゃんの餌食にはなりたくない。普段は温厚で優しいんだけど、ストライド絡むと途端に敵視されるからギャップが恐い。


「あ、えっと……さっきの兄貴の言った事だけど。本当なんだ。俺も憧れてて、女の子なのに早くてカッコいいなんて尊敬する」
『照れちゃうな。みんな美化しすぎだよ。でもありがとう。あ―ちゃん』
「あ、あ―ちゃん?」
『し―ちゃんの弟だからあ―ちゃんってこれから呼ぶね』

「それは恒例なのか?」
「藤原ッ!何でお前はこんな雰囲気の中斬り込みに行けるんだよ!お前は特攻隊長か!尊敬するけども、その行動はグッジョブだけれども!」


突然、たけちゃんとりっちゃんが乱入してきて会話は強制終了となる。


「祈ちゃんは返してもらうぞ」


そう言ってりっちゃんが私を自身の背に隠すと、西星も時間を推しているのか背を向けて別のスタジオに向かって背を向けて歩き始める。


「俺も方南(そっち)に行こうかな」
「怜治様。冗談でもそれだけは許しませんよ」
「静馬は手厳しいな」
「マジだったんだ」
「祈。また君に会いに行くよ」


振り返り、れいちゃんはそんな台詞を残して嵐のように去って行った。


「祈ちゃんの知り合い?」
『そんな所かな?』
「(イケメンばっかりでヘコみそう)へぇ―、そうなんだ」
「俺達は勝つだけだ」
「(藤原は狙っているのか?いや、こいつは有栖川だけだよな。だが)流石にあの眩しさには敵わなくねぇ?」


何だか会話が噛み合っていないような…。疑問に思いつつも思考はアリスちゃんの声で全て元に戻った。


「祈さ―ん!撮影の準備が出来たので行きますよ!」


それは悪魔のような言葉だった。



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