18
「やっぱり祈は最高の逸材だわ!次はアレよ!」
「祈さんは何でも似合うんですね!コレとかもお似合いですよ、きっと!」
「アラ。あなたわかってるわね」
「お姉さまこそ。最高のセンスですよ」
支倉先輩のお姉さんと有栖川が手を固く握り合い握手していた。
「最悪な結託が結ばれたな」
支倉先輩はまるでこうなる事を予測していたみたいで諦めの境地に立っていた。それでも完璧にモデルをこなしている先輩を俺は尊敬します。
『解ってたなら引き合わせるの止めようよ』
祈ちゃんも遠い目をしながらも支倉先輩とのツ―ショットを難なくこなしている。モデル経験あるのかな?それはそれで個人的に気になる。
「それで、支倉先輩の秘蔵写真とかはありますか?」
「何に使うの?」
「支倉先輩で遊ぼうかと」
「いいわね。コレがモデルデビュ―写真よ」
悪魔同士の取引の結果。支倉先輩の可愛い子供時代の写真を閲覧する事になった。
「かわいい」
「天使だ!」
「マジもんのエンジェル!」
「……かわいい」
有栖川が思わず本音をぼそっと言ったので周囲が一旦静かになった。その静かさに気がついて余所を向いた。有栖川って実は可愛いもの好きなのか?
藤原が徐にスマ―トフォンを取り出したのを有栖川が必死に止めていた。
「お前マジで止めろ!」
「何故だ」
「何でデ―タ消してないんだよ!」
「別に構わないだろ」
「構うわ!あたしが構うわ!」
「ほんとっ仲良いよな、藤原と有栖川」
「ねぇ。純は否定するけど藤原くんの純に対する気遣いとか見てると、二人の年月とか感じるよね」
藤原が唯一気を使う相手が有栖川ってことなのか?桜井さんの言葉に首を傾げた。
「他にはないですか?」
あ、有栖川が一発藤原の頭部を殴ってからお姉さんに振り返った。必死だな。
「これは二年前くらいのかしら」
「だから、見せんじゃねぇ!」
そう言ってお姉さんは俺たちに再度スマートフォン画面を見せてくれた。だけどそこに写っていたのは支倉先輩と巴だった。
「あ―これは通常運転のホクロ先輩ですね」
「もう、普通にカッコイイでしょ。純は……アレ?この一緒に写ってる人って」
桜井さんの言葉の後に続いたのは俺の口ではなく、先程まで撮影をしていたクラシカルドレス姿の祈ちゃんだった。
『ともちゃんだね』
「とも、ちゃんさん?」
「正確に言うと八神巴。高校ストライド最高のランナーよ」
お姉さんは徐に一枚の冊子を手に俺たちへ見せた。そこには巴と祈ちゃんが一緒に写っていた。
「コレも2年前くらいかしら。いい被写体だったから撮ってもらってカタログに起用したんだけど。これが大反響で。この時から彼と祈はよく一緒に撮っていたわよね」
『撮らせたの間違いでは?』
「え?何か言った?」
『いえ、何も』
「今、彼は?」
「海外に留学中です」
「そう、残念ね……。今年もカタログ出そうと思っていたのに」
『人の許可取ってないのに、カタログとか出さないでくださいよ』
「いいじゃない祈。美しさは存分に見せつければいいのよ」
『綺麗じゃありません』
巴の事を思い出してしまう事もあまりいい気分ではないけれど。それ以上に祈ちゃんとモデルの写真も一緒に撮っていたなんて、知らなかった。俺だけだと少しだけ浮かれていた自分を思い出す。そうだ、あの時俺は浮かれていたんだ。巴の友達である祈ちゃん。紹介された。常に後手だった俺が、兄貴を唯一抜いた瞬間だと、優越感に浸っていたんだ。兄貴の知らない祈ちゃんを、独占出来たと。馬鹿だな……。天才はやっぱし天才と一緒の方がいいに決まってんじゃん。
唇を噛みしめて前髪が降りて来る。周囲の音が聴こえなくなっていた。
「またお兄さんと一緒に走れるといいね!」
桜井さんの声が俺には酷く耳が痛かった。俺は兄貴が嫌いなのか?それともストライドが嫌いなのか?俺は……よくわからない。
『ななちゃんも着替えて来なよ。ずるいぞ』
「わわっ!押さないでくださいよ、祈先輩」
『見せろ―見せろ―』
「ふふふ。わかりました。着替えて来ますね」
桜井さんの背中を押して会話が途切れる。ふと顔を上げれば祈ちゃんが何でも見透かしたような瞳で、微笑んでいた。
「祈ちゃん……」
「お前は本気が足りない」
伸ばしかけた手は藤原の声で遮られた。その後ろでは有栖川が頭を抱えていた。
「少し走ってくる」
「ほどほどにな―藤原」
有栖川が藤原を見送ると振り返り親指で俺に「 行けよ 」と合図した。それに乗じて俺も藤原を追いかけた。やっぱ有栖川は勇者だな。
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