04
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side:you
「祈ちゃん何処まで行くの?」
『ちょっとソコまで』
そう言ってりっちゃんを内緒でクラブハウス棟まで連れて来た。中へ入ろうと一歩踏み出す。
「八神くん」
「桜井さん!」
中からツインテ―ルの女の子とショ―トカットの女の子?スカ―ト穿いているから女の子かな? それから学ラン着てるから男の子だ。と何故か安堵した。
「どうしたの?こんな所で……って藤原も一緒なんだ。アレ?有栖川さんも?」
「……八神、お前は来るのが遅い」
「はい?」
「藤原に同意」
「へ?有栖川さんまで……というか、仲良いの?」
「違う」
「そうだ」
何だか一年生同士で仲良く会話を始めてしまった。ので、私は絶賛暇を持て余している。多分、ほづみんが言ってた入部希望者ってこの子たちの事かな?何だかりっちゃんとも仲良いみたいだし、連れて来て正解かもしれない。 ナイス、私。ファインプレイ。
「あの……あなたはもしかして、その、恙御祈さん、ですか?」
背の高い有栖川さんが私に声をかける。何だか震えている。
『うん。そうだよ』
よろしくね。を言おうとしたのだが、それを遮ったのは紛れもなく有栖川さんだった。いきなり飛びつかられて抱きしめられて、持ち上げられた。
「ぎゃあああああああ!!祈さんだあああああ!!うわあああああいい匂いがするぅぅぅぅ!!」
何語を喋っているのかな? 取り合えず童心に返った気持ちで振りまわされた。
「お、落ち着いて純!先輩が目を回すよ」
「初めて見たな。取り乱す姿を」
「お前は何でそんな時まで冷静なんだよ!祈ちゃん。大丈夫?」
『きゅるるる……』
「完全に目を回しているようだな」
「ど、どうしよう!ここは保健室?でも部員を確保しないとあとひとり!でも、置いていけないし……」
「落ち着け、桜井」
「さっきまで取り乱しているお前には少なからず言われたくないと思うぞ」
「このまま部室に持ち帰ろう」
「憧れている先輩を持ち帰るって言い方は駄目だと思う!」
「大丈夫。部員はこれで揃った」
「へ?揃ったって?」
薄目で行方を見ていると。有栖川さんが自分、桜井さん、藤原くん、りっちゃんを順番に指でさした。
「戻るか」
「そうだな」
「……待て。俺も数に入っているのか?」
「「 当たり前だろ 」」
「何このコンビ!ってお前達の部活って何だよ!」
「ストライド部だよ。そっか八神くんが入ってるくれるのか。よかった!」
「あの桜井さん。俺は一言も入るとは……いえ。何でもありません」
気になる女の子の手前。断ることを渋っているのかも。そんなりっちゃんを脇に抱えて連行し出した藤原くんの、筋肉は凄い。
そして、私もぬいぐるみのように抱えられながら二階の部室まで連れて行かれた。
★
『新入部員ちゃん確保したよ―』
「……捕獲されたの間違いじゃないの?祈ちゃん」
部室の扉を開けると中では既にジャ―ジに着替えてストレッチをしているほづみん、あゆむんが居た。勿論、ひ―ちゃんも。
『今年は豊作だね』
「お前は一年になに運ばれてんだよ」
『えへへ……』
呆れたひ―ちゃんが有栖川さんからひったくるように私を肩に担ぎ離される。有栖川さんがとても悲しそうな目をしていた。
『ひ―ちゃん悪者』
「オイ」
ソファ―に降ろされ頬を左右に引っ張られた。
りっちゃんはまだ抵抗しているようで、離せと言っている中。ひ―ちゃんはりっちゃんを見て気がついたようだ。
「お前……八神陸か?」
尋ねられた、りっちゃんはとてもバツの悪そうな顔になり大人しくなった。
「八神、だって!?」
ほづみんもあゆむんも気がついてひ―ちゃんを見つめる。
「お前……知ってて連れて来やがったな」
『ん?どうかな?』
「とぼけんな」
頬をまた引っ張られた。伸縮性があっても痛いものは痛い。
「……ヒ―スくん。もしかしてこれって」
「ああ。マジ、運命始まっただろ」
『ひ―ちゃん。顔が悪役になってるよ』
また引っ張られた。
「口は災いのもとですぞ、恙御氏」
『本当じゃの』
赤くなった頬をさすりながら若干の涙目。あゆむんが頭を撫でてくれた。
何もわからないりっちゃんと桜井さんは互いに顔を見合わせているけど。藤原くんと有栖川さんはそこまで驚いてはいなかった。まるで、こうなる運命だったとわかっていたみたいだ。
「そっかそっか。なら。やんなきゃしかたねぇよな!」
生き生きとしたひ―ちゃんを見て、私もつられて笑った。よかった。こうなって本当によかった。
「これでランナ―が七人だから……」
「あ―……、やっぱり僕も数に入ってる……よね?」
「当然。ワケもなく走り込みなんてさせね―よ」
「させね―よ!」
『させね―よ!』
三人でピシリ と言うとあゆむんが心なしか涙ぐんでいた。
「謀ったな……小日向氏……」
「部活動とは詭道なり」
「ああっ、孫子を出すとは小日向氏しぶい……ッ!」
テンションの上げ下げが激しい子だね。遣い方を熟知しているとも言う。これくらいのユ―モア差がなかったから……。
「お前ら、い―からその小芝居やめろ」
『ひ―ちゃんはユ―モアが足りないんだよ』
「何でお前はそこで俺を憐れんだ目でみんだよ」
ひ―ちゃんがぽんぽんと頭を撫でる。こういう所は鋭い。
「あとはこの中からリレ―ショナ―を決めれば試合にも出られますね!」
「もう決まっている」
「「 え 」」
「桜井でしょ」
「えっ……?私!?」
藤原くんと有栖川さんは迷いのない目で桜井さんを指名した。なるほど。これは面白い展開になってきた。
タン! とソファ―から立ち上がり背伸びをする。
「リレ―ショナ―って女子でもなれるんですか?」
「確かに女子のリレ―ショナ―は珍しいけど。いたよ。かつてのトップチ―ムにもね」
ほづみんが振り返り視線が私へ集まる。軽いストレッチをしながら首を傾げた。
「あの、もしかして……」
「祈がそうだよ」
『いやいや。私はそんなに有名ではないのだよ』
「何を言ってるんですか祈さんッ!ランナ―で一躍有名人になりながらも、リレ―ショナ―でも優勝へ導いたではありませんか!」
『わ―凄い熱意だね。どうもありがとう』
興奮状態で有栖川さんが語るので若干身体が距離を保とうとする。
「あの、でも恙御先輩がいらっしゃるならリレ―ショナ―は私じゃなくても……」
『ストライド、好きなんでしょ?』
「はい!好きです」
『じゃあ……問題ない。控え選手は多い方がいい。女の子だから遠慮するっていうのは好きじゃないの。好きならとことん勝負しよう、ね?』
ウィンクを飛ばすと桜井さんは力強く頷いた。
「あの、でも勝負って?」
『それはね―。方南ストライド部恒例の、新入生歓迎会の事だよ』
にこりと笑うと一年生たちは口を閉じた。
「あ、いや。俺……」
りっちゃんが当然のように渋った。無理もないとは思うけど。連れて来たのは私だ。桜井さんが表情を曇らせる。
『りっちゃん』
「祈ちゃん……」
『ここまで来たら腹くくるしかないよね』
「ぃうわなあちゃぁんん」
肩に手を置いて笑顔でそう言うとりっちゃんは、それ以上何も云わなくなった。
『りっちゃんはいい子だね』
「お前が言わせなかったんだろうが」
ひ―ちゃんの鳩尾に拳をめりこませた。
「あの……支倉先輩は大丈夫なのでしょうか?」
『大丈夫だよ。死んでも目覚めるから』
「それは……死んでいるんじゃ」
「流石祈さん!」
「お前はキャラが迷走してないか?」
「変態のアンタに言われたくない」
騒がしくなるスト部に、ほづみんがドドン! と間に入った。
「じゃあ早速。始めようか3on3でストライド!」
ほづみんの声が部室内に響き渡った。
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