1
突然喋る狐が現れて、訳の分からない事を言われてブチ切れなかった自分を褒めて欲しい

「…あー、なに、つまりアタシに審神者って奴になって、刀剣男士って奴等と一緒に歴史修正主義者?って奴を過去に戻って倒せって事?」

喋る狐に説明された事を自分の頭ん中で整理しつつ繰り返した。

「理解が早くて何よりです、突然連れてきて申し訳無いのですが、とにかく承諾して欲しく…」

ふんふんなるほど、へぇー……。

「断る」
「!?今のは承諾する流れでしたぞ!?」

いや知らねぇよ流れとか、フラグって奴だろへし折ってやる。
いきなり歴史の教科書で見たような建物に連れてこられて審神者とか歴史修正主義者とか聞いたことねぇ単語並べられてハイわかりましたとかすぐに頷けるわけねぇだろ。帰る。

「って離せコラ!足に掴まんな!」
「離しませんぞ!承諾してくれるまで離しませんぞ!」

帰ろうと立ち上がると喋る狐がアタシの足にひっついた。振り払いたいけどさすがにそれやると動物いじめみたいな絵面になりそうだから出来ねぇ。
承諾するまで離さないって言われてもアタシはやる気無いし、さっさと家に返して欲しいんだけど。

「アタシじゃなくても他の奴いんだろ!」
「貴女様に霊力があるから私はお願いしているのです!それに政府からの直々の命で!」
「霊力!?そんなもんあるかよ!」

霊力とか有り得ねぇだろアタシにはねーよ、非現実的すぎるだろ。確かにチラチラ昔から幽霊っぽいの見えるのはあるけど、そういうのは霊感やら何やらだろ、まずアタシはそういうの信じない怖いとかでなくな。違うからな。

「とにかく離せ!例え審神者とかやったとしてもアタシに利益もなんもねぇだろーが!」
「もしも!もしも歴史を改変されてしまえば貴女様のいる時代にまで影響が及ぶかもしれないのです!それを理解して頂きたく!」

は?何でアタシがいる時代?
あくまで過去とかが改変されるだけだろ?
意味がわからないと無言で狐を見つめると信じられないと言う風にため息を吐かれた。

「頭が悪いとは事前に聞いていましたがここまでとは……」

蹴り飛ばすぞこの野郎。
いやでもその辺は気になるな、影響あるってどういう事だ。

とりあえずいい加減鬱陶しいので、足から狐を引っぺがし、話だけは聞く体制に入った。
やる気になった訳ではないが、自分のいる時代にまで影響があるかもしれないとか言われたら普通に気になる。それで更にめんどくさい事にはなりたくねぇ。

「まず歴史修正主義者は、様々な時代に潜入し、歴史を改変しようと目論んでいるのです」
「様々な時代?」
「はい。ある時は戦国、ある時は平安や鎌倉、ある時は幕末…などつまり戦のある時代ですな」

ふぅん…そこの辺の歴史を変えようと色々奮闘してると。
戦国とかって言うと信長とかか?幕末とか平安とかはそのよく覚えてねぇけど。

「例えば信長が死んだ事を無かったことにして、信長に天下取らせるとかそういう事?」
「はい。つまりそういうことになります。」

なるほど本当に改変する方向にするわけだな。信長に天下取らせて、歴史変えて…で?

「で、それが今の時代にどう関係すんの?」

そう聞くと狐は絶句した表情を浮かべ、後ろを向いて何やらブツブツ呟き出した。頭悪くて悪かったけど、例え信長が天下取ったって事になったからってどう変わんだよ。

「…………ええい、とにかく雑に言うと、もしそういう歴史改変を行われた場合、貴女様のいる時代が未だに戦をしていたり、戦争が終わってなかったり等の可能性が出てくるのです」

…は?
どうやら真面目に大変らしい。事の重大さにようやく気付いた。だってそんな事思い浮かばないだろ。

「まってそれすっげぇやべぇじゃん」
「だから言ってるでしょう。とにかく、今の審神者の数だけでは人手不足にも程があり…歴史修正主義者の数もどんどん増え…」

狐が言うには、審神者とやらの人手が相当不足しているらしかった。つか1人じゃねぇのな、そりゃそっか。つーか盛大に溜息つきやがったな後で覚えてろよ。
…つっても審神者なんて職業聞いたことねぇけどな、一般人じゃ知る由もないとかそんなんか。
……はー、さすがにんなことになったら大惨事所の話じゃねぇしな…。
………不本意だけど、すっげー嫌だけど……

「あー…わかった、やりゃいいんだろ」

本当に不本意だが、審神者とやらをやる決意をした。まぁアタシ1人が加わったところで大した変化も起きなそうだが。

「!承諾してくださいますか!?」
「元より承諾するまで返す気無かったんだろーが…」

渋々承諾すると狐は嬉々としたようにその場をくるくると周り出す。なんだこいつ少し可愛い。
審神者とやらはとりあえずアタシが未成年な為家族の承諾、そして学校の承諾が必要らしい。学校は今年から入る高校になるか…。
そんで自宅には帰らずに基本的に今居る本丸とやらで刀剣男士と生活する…ええ…。

「学校には通いながらだよな?」
「それは貴女様の自由となります。面倒ならば1日本丸にいて仕事をするという選択もありますし」
「いや必死に受験勉強したのにそれは嫌だ」
「左様ですか。とりあえずご自分の判断で大丈夫ですよ。………それと、1つだけけ重要な事が」
「あ?」


────刀剣男士に真名を教えてはならない。

1/9
prev  next