ろくでなしと呼ばれた男


とりあえず手元に50万円の纏まった現金が手に入った訳だが…

家賃が8万円、固定電話代が1万円、携帯電話代が2万円、ポケットベルが2つで7000円、電気、ガス、水道光熱費15000円
ナニもしなくても固定費で最低限このくらいは溶けていく
最低限の食費を入れたら最低20万円は手元に残して置かないとならない計算になる

今から使える予算は30万円ポッキリしか無いのだ

このままナニもせずにだらだら過ごしてしまっても、2ヶ月半後にはまた振り出しに戻る事になってしまう……

しかもその時は現金化出来る虎の子すら全く無い状態

無い知恵を絞り、今すぐ30万円で出来るナニかを考えなければ元の木阿弥……
今の自分にナニが出来るのか?

自称ロクデナシ……
探偵をする前は僅か半年でキャバクラの店長をするまでに成り上がった能力はあった……
その前はヒモで女を転がして食っていた……
手っ取り早く女で食う能力に特化している才能があるのは自他共に認めるのだが……

今の自分にすぐに出来る事はナニか?
出来ればなるべく仕事はしたくないので時間単価が高く、多少後ろめたさは有っても実入りの良い商売が良いが……

女で商売するのは今度はちょっと避けたいと思っている
女は仕事抜きで純粋に遊ぶのがメンタル的にも健康的にも健全だと、散々痛い目にあってから学習し出した結論だ

人間痛い目に合った数だけは成長しなければ、同じ過ちを繰り返すだけの懲りない人になってしまう
多分俺は人より多く精神的にも肉体的にも痛い目を経験している自覚があるので、多少は成長しているのだと自分では思いたいのではあるのだが……
周りの評価はそうはなら無いのでロクデナシのバカと呼ばれているのだろう。

辞めた探偵社の前に勤めていた探偵社では、他の探偵社では殆ど行われ無い様な盗聴をメインとする非合法な調査を多数行っていたダークな所だった

どのくらいダークだったかと言うと、ある先輩調査員は他人名義のクレジットカードでトランプが出来ると豪語してたり、俺をスカウトした調査員は名前が違う自分の顔写真がついている運転免許証を3枚所持していたり。通常ではあり得ない特技を持っている存在自体が既に当たり前に犯罪者な調査員達。
書類のマジシャンと呼ばれているどんな書類でも偽造してしまう調査主任
そんな濃い連中に負けじと俺も独学でピッキングを勉強中だが、まだまだどんな鍵でも自由自在と言う訳には行かないアマチュアレベルなのでイマイチ精進が足りていない。
そして極めつけなのが声優顔負けに何種類もの声色を自在に使い分ける事が出来て、あらゆる人物に電話で成り済ます事が出来る特技がある所長だが、探偵と言うよりも半分以上得体の知れない詐欺師か妖怪だろうってくらい掴み所が全く無く、いつも気がつくと完全に手玉に取られてしまっている
探偵事務所と言うよりも犯罪者養成学校かスパイ養成学校と言った方がしっくりくる

そんな所長は定期的に逮捕されて度々留置場と拘置所に出張に出かける事がある。
しかも自分からちょっと逮捕されに行って来ると勾留セットを持参し警察署に出頭しに行くのだ。

逮捕されても新聞記事も出なければTVニュースにも成らないのでなんの罪名かすらもわからない。
俺がこの探偵社に入所して初めて所長が逮捕されたと聴かされた時に、副所長の奥さんを始め他の調査員は誰も驚く様子も事無くごく普通にしていたので余計に驚いて…
副所長に尋ねた所、貴方が気にする事じゃないので気にしないで大丈夫だからと説明されただけだった

そしていつの間にか不起訴処分or誰かしらと示談が成立して20日くらいから長くても2ヶ月で必ず戻ってくるとても不思議な人だ。
そんな訳で前科すら無いらしい

しかも必ず新しい調査員を2人〜3人程連れて戻ってくるのだ
ナニしに留置場や拘置所に出張しに行っているのか?
どんなカラクリがあるのか全くわからないのだが
ウチの所長は警察界隈ではかなりの有名人であるらしいしと噂では聴いている。
警察が依頼元なのでは?としか思え無い様なキナ臭い仕事内容の全く説明のされない仕事もした事も多数ある気がする。

まさか所長はリクルート目的で逮捕勾留されている訳では無いだろうが…
調査員スカウトの場所がヤバすぎる
調査員にも調査内容の全容が全く知らされないヤバい仕事が中心となるのだろうとは、肌感覚で感じとれる事なのだ。

それにその様に所長がスカウトした調査員はだいたい2〜3ヶ月でいつの間にか消えてしまうので、レギュラーメンバーの調査員はいつも決まった顔しかいないのだ

俺がこの探偵社に入る切っ掛けとなったのは警察署の留置場でスカウトされた訳では無い。
いくら素行が悪くても、まだ警察署の留置場をホテル代わりに利用出来る身分では無いって事だ。

行着けの高円寺のBARでたまたま知り合った客がココの調査員で、なんとなく事務所に連れて行かれて所長と面接して気が付いたら深夜の張り込みをさせられていた
自分でも良くわからない理由だかそんな感じで探偵になったのだ

この事務所の裏の内情を殆ど知らない俺は果たしてレギュラーメンバーと言えるのだろうか?

調査員の素性が本物かどうかわからない
スパイか詐欺師か犯罪者の様な愉快な連中と一般ではどこも請けない様な非合法な依頼を秘密裏にこなし、給料は全く良くはなかったけど謎の現金収入実有り、任務の過酷度は日本一と言っても誰もが納得するレベルで所長が日常的に逮捕勾留される
そんな滅茶苦茶な所だったが、自分としては別に居心地は悪くはなかったので珍しくもう3年以上も勤まっていたのだが

昨年ある宗教団体が地下鉄テロ事件を起こした事が切っ掛けと成り、例の如く詳しい理由等末端の俺には知らされる余地も無く、その探偵社は突然解散してしまう事になったのだ。

そして各調査員は全員解散を言い渡されて、互いに連絡を取る事も今後交流も禁止され、金輪際同探偵社と関係は一切無かった事を条件に全く交渉の余地無く一方的にたったの20万円ぽっち手渡されたきりで放り出されてしまったのだ。

そう言えば…雇用契約等も交わした記憶も無く、給料は毎月25日に今時なのに現金で手渡しされる&給料とは別に口止めボーナスと言われる現金封筒が別に支払われる給料体系だった、最後に渡された金額がたった20万円しか無いって事はかなりヤバイ事態なのだろうと想像に至るのは難しくは無かった

そして封筒の中に現金と一緒に入っていたメモを頼りに途方に暮れる間すら無く、本人の意志すら及ぶ間も無いまま某大手探偵社と呼ばれていた探偵社にとりあえず在籍する事になったのだが…

どうにも大手探偵社って所は自分と水が合わないのと、そこの事務所所長の息子がボンボン面引っ提げてアレコレ指図するのが余計気に食わず

ナニもかも面倒くさくなり、調査員待機事務所で大酒をかっくらい、たまっていたフラストレーション大爆発の勢いで大乱闘を引き起こしてしまい謹慎処分を言い渡された時にこちらから三行半を叩き付けて辞めたのが退職理由だ

今更もう後には引けず、現状を自分でどうにかしなければ、時がどんどんホームレスへのカウントダウンを刻んでいくだけなのだ。





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